狐と闇色の杞憂
2014/10/20 16:33

「帝様・・・・・・。」

艶っぽい声で、俺は今日も帝を誘う。

「お前が九尾の妖狐だとの噂が流れている。其れは誠か?」

「まあ怖い。私のようなか弱き女が、そんな恐ろしい妖〈あやかし〉であるはずがありませんわ。」

甘い声を出す。帝は俺の言葉を満足げに聞くと、俺の上に跨がった。
帝に合わせる内心、俺は嘲笑う。
俺も随分長く生きてきたが、人間ほど欲深く、浅ましい生き物は見た事が無い。
でも、今俺の上で権威を奮っているこの帝も、せいぜいもって7、80年なのだ。

帝が疲れ果て眠るのを待ってから、俺はそっと、宵闇に哀れみの唄を口ずさんだ。





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