「ねえさま…」

赤い髪を持つ男の子は、同じく赤い髪を持つ少女の服の裾を引いた。

『どうしたのサソリ?』

それに優しい声色で答える少女。

…二人の顔立ちは、性別・年齢が違うにも関わらずそっくりだった。

まだ幼子、顔の造りが完成体ではないせいもあるのだろうが、実際顔だけなら双子と言ってもあまり違和感はない。


「ねえさま。きょうも、くぐつをおしえてください」

男の子…サソリがそう言うと、少女は勿論と返事を返してサソリの手を引き、己の部屋に招いた。

そして、壁にぶら下げているネコに見立てた傀儡を手に取る。

「ねえさま、これ…」

『私のお気に入りなの。自分で作ったのよ?』

「す、すごい…。ぼくも、じぶんでつくれるようになる?」

自慢げにサソリに傀儡を見せる少女。
その傀儡を見て、サソリは眠そうな瞳を輝かせる。

でも、その瞳は一瞬にして不思議そうなものに変わる。

「…なんで、ねこさんのしっぽ、こんなにとがってるの?」

ねこさんのしっぽ、もっとふわふわだよ?
そう少女に素直な疑問をぶつけるサソリに、少女は苦笑する。

汚いことをまだ知らないサソリにとって、この凶器となる尻尾は疑問の塊であろう。


『これはね、サソリを守るために戦うネコさんだから。…ネコさんも武器を持ってないと負けちゃうでしょう?』

そう、この傀儡は少女がサソリのことを守る為だけに作った、任務用とは別の傀儡だった。

お気に入りとは言っても、サソリに危険がない今まで、使ったことはない。

「ぼくを……まもる?」

『そう。サソリを守る』

「…じゃあぼくは……ねえさまをまもるくぐつを、つくりたい」






人形に成りきれなかった人間3






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