私はサソリのベッドに座り、傀儡を造っている彼の背中を見つめる。
カチャカチャと音が響く静かな部屋。
今日はアジトにいるメンバーが私とサソリ以外出払っている為、爆発音や五月蝿い笑い声といったものは聞こえてこない。
それが何とも平和に感じた私は、サソリの手によって形成されていく傀儡をウトウトしながら見続ける。
「……眠いのか?」
すると、呼吸が浅くなってきた私に気付いたのだろうか。
首だけを180度回転させたサソリが私を見て声を掛けてくれた。
『ん、平和だなぁ…って思ったら眠くなっちゃって』
「暁に居て平和も何もねェだろ。オレが造ってんのは殺人道具だしな」
そう言って首を元の向きに戻したサソリ。
その言葉は正論としか言いようが無いもので、私は苦笑を浮かべる。
すると突然、何を思ったのかサソリが弄っていた傀儡の一部(手であろうと思われる)と道具を持ったまま、私の隣に座った。
「……まあ、平和ってのには賛成してやる」
そう言って私の腰に手を回し、その状態で傀儡を弄り始めるから、自然と私はサソリにギリギリまでくっ付くような体制になる。
それがなんだか嬉しくて、私は冷たい身体の彼に寄り掛かる。
感覚とは違い心は温まって……それがまた嬉しくて私は笑う。
すると、私の笑い声を聞いたサソリは手を止めた。
『サソリ?』
不思議に思ってサソリに顔を向けると、片手を頬に添えられ優しく口付けられた。
「オレは傀儡だ。だから女としての幸せを与えてやる事は出来ねェ……だから」
いつもの眠そうな表情から一変。
悲しげな、苦しげな表情をされてしまえば、サソリが何を言おうとしているのかなんて嫌でも分かってしまった。
『私は子供なんていらない。だってほら、今こんなに幸せだもん』
…私は、彼から離れる気なんてない。
にっこりとサソリに向かって微笑むと、彼はふっと口元を緩める。
この表情はきっと、私以外知らない表情。
「ナナシ、愛してる」
ほら、やっぱり幸せだ。
傀儡造り見学