ウ゛ー、と携帯のバイブ音が鳴り、私にメールが来たことを知らせた。
それを開け、見てみるとそこには

「東京なうwwww」

…という文章と添付されていた友達と友達の彼氏のツーショットがあった。
それにイラっとし、思わず「ふざけんなよ空気読め事情知ってんだろ!」という女子にあるまじき文章を送りそうになったのをぐっとこらえ「あっそ」と簡潔な文を送ってやった。
ああ、イライラする。
原因はリア充満載なメールが送られてきた、ということではない(相手が相手だから浮かれる気持ちもよくわかるからだ)私の苛立ちの原因は、彼女のメールによってあることを知ってしまったから。


そんなことを思ってると返ってきた返信。
それは、
「ごっめーん!そういやなまえ、幸村くんと東京行けなくなったんだね、てへぺろ」
という私の地雷を踏むような、いや私の地雷を踏んだ文章だったので携帯をベッドに投げつけ(放り投げ、ではなく投げつけ)放置することにした。




そう、私がイライラしている原因は紛れもなく、幸村精市だ。



今日から誰もが楽しみにする連休。
私も例外ではなく、彼氏である精市と前から一緒に行こう、と言っていた東京に出かけよう、と誘った。
すると彼は

「ごめん、連休は部活で埋まってるんだ。」

と、申し訳なさそうに私に言った。

部活なら仕方がない。
なんたってうちのテニス部は王者立海、と言われるほどの強さだ。
練習量も半端ではない。
そして幸村はそこのレギュラー。
休むわけにはいかない。
だから「最近学校以外で会えないのに、」という我が儘をのみこみうなずいた。



そんなやりとりをしたのは、昨日のことだ。

そしてさっき添付された写メに写っていたのは。



精市と同じ部活に所属する真田弦一郎だった。


そう、見た目も中身も年齢詐称疑惑のある真田にはなんと彼女がいるのだ。
まあそれはさておき。

あの、真田が。
デート、というけしからん(と以前は言っていた。そう、以前は)ことで、部活を休むのだろうか。
いや、ないだろう。

ということは、やはり、本当に部活は休みなのか。

さっき思い切り投げつけてやった、携帯を手にし、私は通話ボタンを押した。


プルルル、


「あ、もしも「今日、部活は休みなのか、とお前は言う」……」

開口一番がそれだった。
無性に腹が立ったのでぶちっと電話を切ってやった。

プルルル

「…はい」

「先ほどはすまなかった。」

電話の主は、三強の残りの一人、柳だった。

「まったくだよ」

「で、答えてやろう。今日部活は休みだ」

「どうも……」

「ところ「んじゃ、そういうことだから」

柳が私の質問を答えた途端切ってやった。

ほんとなんなんだ。
精市のバカ。馬鹿…ば…か…




「ふぅ…」

小さく息を吐き、俺は椅子にもたれかかる。
なまえのことは柳からさっき電話で聞いた。

その時だった。
ぴんぽーん、と家のチャイムがなる。
家には俺以外いない。

そこにいる人物は想像できたので、僅かに口元が緩んだ。

はい、と言って出れば、そこには予想通りの人。



がちゃり、とドアが開いたかと思うとそこには私の怒りの矛先である人物が、いた。

なんなの。
平然と出てきて。

そんな精市の姿を見て、私は更にふつふつと怒りが湧き上がった。

「……精市」

「ん?」

「今日、部活ないんだってね」

「ああ…うん」

「……うん、じゃないよ」

気づいたら目には涙が浮かんでいた。
でも、言葉はとまらない。

「なんで…?昨日部活だから今日出かけられないって言ったじゃん!私ずっとずっとずと楽しみにしてたんだよ!?」

「うん、」

「なのに…あの堅物でさえデートしてるんだよ!?」

「うん、だから俺、断ったんだ」

「…は?」

「部活で真田と話しているときに、真田も彼女と東京行くって話を聞いてね。というか、東京のどこに連れていけばいいか相談を受けてね。なまえと真田の彼女って結構趣味とか合うみたいだから、なまえが行って喜びそうなところを教えてあげたら、今日真田たちが東京行くって聞いたから。真田たちとばったり、とかになったらせっかくの二人きりの時間がなぁ…て思ったんだよ」

「…そ、それなら、別のところに誘ってくれたらよかったのに」

「うん、ごめんね…もしそうなったらなまえ、なんで別のところになるか聞くだろう?」

「そ、そりゃあ…」

「だから、嘘ついて、断ったんだ。真田たちに会いたくないから、なまえが真田の彼女にとられるかもしれないから、…なんて、カッコ悪いだろ?」


でも傷つけちゃって、そんな顔にさせちゃってごめんねと言って精市は眉をハの字にした。

そんな顔をされると許せないことも許せてしまって。
気がついたら私は頷いていた。

「よかった…そうだ、なまえ。うちにあがっていかない?」

「え、でも家族いるんじゃ…」

「ふふ…実は、今誰もいないんだ」

「そうなの…?じゃあ。おじゃまします…」




「流石幸村だ…。真田が東京に行くとわかったあと、彼女を自分の家に連れ込むように仕組むとはな…」


私はその時知らなかった。
立海テニス部の参謀がそう言っていたことを。


そして、幸村の目が怪しく光っていたことを。





長い。


要するに、計算高い幸村さん




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