「お前ら席につけよー」
チャイムが鳴り教室に入ってきた先生はそう言って教材を置くなり黒板に今日の日付を書いた。これは、この先生のいつもの癖。
いつもなら気にしない文字。
でも今日はとても目に入る。
『4月20日』
そう、今日は私の彼氏、丸井ブン太の誕生日なのだ。
*
新学期が始まってから1ヶ月。
そろそろここの環境にも慣れてきたところだ。
ブン太は中学校を卒業後、立海大付属高へ進んだ。
でも私は、普通の高校。
要するに、学校が違う。
私が通う学校はブン太の家の近く。
でもお互い忙しくメールは毎日しているが、中々会うことができない。
だから私はブン太の誕生日にブン太の家まで行って会いにいくことにした。
…本人に言ってないけれど最悪ブン太の家族に渡せばいいだろう。
向こうも私のこと知っているし。
*
キーンコーンカーンコーン…と放課後を告げるチャイムが鳴った。
「なまえちゃん明日が部活の入部届の締切だけど何にはいるの?もしよかったら一緒に男子テニス部マネージャーやらない?」
よし、と覚悟を決めてブン太の家に行こうとしたとき、同じクラスの友達が話しかけられた。
「え…と、悪いんだけど一応女子テニス部に入ろうかと思ってて…」
「え!なまえちゃんテニスやってたの!?」
「ううん…やったことないよ」
でも、中学校の時のテニスコートで輝いているブン太を見て私もやってみたいと思ったのだ。
「そうなの?頑張って!」
「ありがとう。」
そう言って友達に笑いかけたとき、ガラッと戸が開いた。
「みょうじさん!!赤い髪のかっこいい男子が校門でみょうじさんの事探してる!なんかりっか…」
気づいたら足が動いていた。
入ってきた子がまだ話していたことなんて気にならなかった。
赤い髪なんて、ブン太しかいないじゃない!
*
「おっせーよ」
息を切らして校門へ行けばそこには人だかり(女子ばかり)と、それをかき分けてこっちへ来たブン太がいた。
「ご、ごめん…」
「んじゃ、行くか。ほら、」
「え…」
「手、」
ブン太はそう言って私の手を取り学校から離れていった。
「久しぶりだな」
「うん…浮気してないよね?」
「当たり前だろぃ」
「わからないじゃない」
「ったく…」
中学の時と変わらない会話。
「そういやお前、部活何にしたんだよ」
「女子テニス部に入ろっかなって」
「女子テニス部ぅ?」
「何よその言い方」
「お前もう届け出したのかよ」
「ううんまだ。ほら」
そう言ってまだ何も書いてない用紙を取り出せばひょい、とブン太に取られた。
「あっ、ちょ、返してよ」
「……なまえ」
私からとったそれをちらりと見ることもなくブン太がこっちを見てきた。
「な、何?」
「…なんかいうことないのかよ」
「え…あ!ブン太」
「…なんだよ」
かえってきたのは不機嫌そうな声。
「誕生日おめでとう。その…生まれてきてくれてありがとう」
「サンキュ。…つーかそんな恥ずかしいこと良く言えんな」
「うるさい!ほら、プレゼント!」
「そんな投げやりに渡さなくてもいいだろぃ」
「う、うるさい!」
「開けてもいい?」
「…うん」
ガサ、とブン太が開けたものの中身は私が作ったケーキ。
「おお!!やりぃ!家帰ったら早速食うぜ!」
「はいはい」
「なあなまえ」
「ん?」
「これだけなのか?」
「は?」
思わず目を見開いた。
何を言ってんだこいつ。
「だからこれだけなのか?」
「それはわかってるわよ!それじゃ満足しないの!?」
「あ、なまえ」
無視しやがったこいつ。
「ほら、入部届書いといてやった」
そう言って渡してきたのは女子テニス部…ではなく、
男子テニス部マネージャー
とかかれた入部届だった。
「はあああああああっ!!?」
「なんだよ、文句あるのか?」
「あるに決まってるじゃない!!なんで私が!?」
「男テニだったら部活でも俺に会えるだろぃ」
「は?」
自分でもなんとも間抜けな声が出てしまったと思う。
「だから交流試合とか、合同合宿とかで会えんだろ」
「そんなうまくいくわけないよ。大体公立と付属校だよ?」
「幸村くんに頼めばなんとかなるって。元男テニマネージャーのお前のこと気に入ってるし」
「そんな、中学の時ならまだしも、まだ幸村君一年生なんだし、」
「大丈夫。もう既にテニス部操ってっから。あ、ちなみに柳と真田もな」
…さすが、神の子。
「まあ、これも俺の誕生日プレゼントだと思って。あとお前制服に合ってるぜ!」
でも俺的にはうちの制服来て欲しかったけどな!と言って無邪気に笑うブン太をみて私は男子テニス部のマネージャーをすることにした。
ハッピーバースデーブン太。
大好きだよ。
(やっぱお前入れるんじゃなかった!男子ばっかりだろぃ!)
(知らないわよ!それに他に女の子いるから!)
end
*
なんか長文になったけどブンちゃん誕生日おめでとう!
そしててぃむも誕生日おめでとう!(同じ誕生日)