「みょうじさん!」
「!」
放課後。そう言って、駆け寄ってきたのは彼氏の鳳くん。
長身で、優しくてかっこいい、自慢の彼氏だ。
………恥ずかしいから本人には絶対に言わない、ううん。言えないけど。
「ここにいたんだ…!」
「……なんだか、疲れているみたいだけどどうしたの?」
「みょうじさんの教室に行ってみたけれどいなかったから…帰ったのかと思って…いそいで来たんだ」
よかった、そう言って笑う彼はとても眩しくて。
思わず、ばっと目を逸らしてしまった。
「…もしかして…迷惑、だった?」
「えっ…あの、」
「ごめんね」
私に背中を向けて歩き出す、鳳くん。
違うのに。
迷惑なわけないのに!
「…の、」
「…みょうじさん…?」
「ちがうのっに…なんで…」
気づいたら涙がこぼれていた。
それを見た瞬間、鳳くんの顔がゆがんだ。
馬鹿、私。
鳳君をこんな顔にさせたくないのに。
「みょうじさん!?」
「ちがう…の!鳳くんが嫌で…目をそらしたわけじゃないの」
「え…じゃあどうして…」
「その、お、鳳くんが…その…あの…」
「…俺が?」
「か、か、かっこよかったから…」
ああ、言ってしまった。
鳳くんはどんな反応をするだろうか。
ちらり、と彼を見れば。
彼はしゃがんでいた。顔を隠して。
「鳳くん?」
「こっち見ないで。」
そう言った鳳くんの声はいつもより低かった気がする。
やっぱり、嫌われた。
「ご、めんね…」
「ちょ、待ってよみょうじさん!なんで謝るの!?」
バッと顔を上げこっちを見た鳳君の顔は真っ赤だった。
「…鳳くんの顔、赤い」
「っ…だから見ないでって言ったのに…」
しまった、とつぶやき鳳君は立ち上がった。
「…みょうじさん、」
頭に重みを感じる。
そう思って上を見ると。
鳳くんがわ、私のあたまをなでてた…
「好きだよ」
そう言ってふわり、と笑う彼の前から私が逃げるまであと3秒。
*
初庭球!
氷帝では長太郎が一番好きです。