「やあ、手塚」
「…幸村か」
俺の姿を見ると、一瞬だけ眉をひそめるが、すぐにいつもの無表情に戻る手塚。
俺はそんな反応を敢えてきにせず、手塚に近づく。
「ほかのトレーナーは?」
俺たち青学のレギュラーが何人かいるはずだが。そう呟いた手塚に俺はニッと笑う。
「ああ、ここに通る時に決まりだから俺たちを無視して通すことはできないって言ったから、潰した。あ、テニスでね」
「…幸村、」
「ふふっ、すぐに勝っちゃって、全然相手にならなかったよ。まあ、あいつがいたなら別かもしれないけど。あいつは別のところに配属しているからね。ここにいるわけない」
「幸村!!!」
「ねえ手塚。俺は今日ここに遊びに来たわけでも、視察に来たわけでもないんだ」
いつもより声を低くして言うと、手塚はこっちを睨んでくる。
「ふふっ、このジムの奥に、あるだろう?」
「なにがだ?」
「とぼけたって無駄だ。何のことを言っているのかはわかっているだろう?
元々あったのをここへ持ってきたのは紛れもない君なんだから。」
「…ヒードラン」
隠しても無駄だと悟ったのか、手持ちのヒードランを呼ぶ手塚。
その口には俺の求めていたもの、がんせきプレートがあった。
「ふふっ、わかっているじゃないか。さあ、それをよこしてよ」
「…これを渡すわけには行かない」
「…俺には必要なんだよ、それが」
「だからこそ、だ」
そう言ってこっちを睨む手塚。
「お前の目的はだいたい予想が付いてる。そして、お前が何をしようとしているかも。
お前は二年前に「それ以上喋るな」
低い声でそう言うと、手塚は小さくため息をついた。
「…だからこそ、俺はこいつを手持ちに入れた。」
そう言ってヒードランを撫でる手塚。
「…それに対していくつか疑問点があるんだけど。」
「答えるつもりはない。ただひとつ言うとするならば、お前の目的にも、考えにも、
行動にも俺は反対だ。お前の行動を阻止する。俺の大切な仲間を倒して尚更な。
だからこれを渡すつもりはない。」
「なら仕方ない。力づくで奪うよ。ふふっ、ポケモンバトルと、テニス。どっちがいいかい?」
「っ………」