「ここらへんならいいよね」
そう言って私はぶぃを地面に下ろす。
するとぶぃは尻尾をふりふりしながらこっちを見た。
「…でもぶぃ、ほんとにいいの?」
そう言うとぶぃはこくり、とうなずく。
「ありがとう…」
にこ、と微笑み私は巾着袋を取り出す。
中に入っているのは、水の石、雷の石、炎の石、めざめ石、闇の石、そしてヤグルマの森のコケのついた石を削り取ったものとネジ山の氷で覆われた岩を削り取ったもの。
最後二つは、博士の協力で手に入れた。
私はそこから水の石を手に取る。
すると、ぶぃは進化の光を放ち、シャワーズに進化した。
そして今度はコケのついた石をとりだそうとした…ときだった。
「へえ、進化させたんだね」
「!!!」
ばっと後ろを向くと、赤い袖のない服を着た男の人。
私はさっと手の中にある「水の石」を隠し、彼に問いかけた。
「あなたは誰?」
「ああ、俺は佐伯虎次郎っていうんだ。みんなからはサエって呼ばれてるからそう呼んでくれるとありがたいかな」
そう言って爽やかスマイルを浮かべる。
「…私はハユリ。よろしくね、サエ」
手を差し伸べるとにこっと笑って手を取るサエ。
「実は君のこと、ずっと見てたんだよ。ここに来た時から」
「!?」
思わずばっと手を離してしまった。
ストーカー!?
「ああ、勘違いしないでくれ。大丈夫、俺は変質者でもなんでもない。君と一緒に旅しているゆ…精市にも確認してみるといいよ」
「…精市のこと、しってるの?」
「うん。…で、君のことをずっと見ていた理由なんだけど。これを渡せるような人を探していてね。君が適任だと思ったんだよ」
そう言って取り出したのは、青い、とても綺麗な球状の物。
私はそれに見覚えがあり、思わずサエを凝視してしまった。
「これって…!!!」
「ハユリはしっているみたいだね。そう、これは蒼海の王子のたまごだよ」
そう言って私にそれを渡すサエ。
「こっこんな貴重なもの…!!」
あわてて返そうとするが、それはサエによって阻止される。
「じつはね、そのマナフィ双子なんだよ」
「え?」
きょとん、と思わずしていると、サエはどこからかもういっこわずかに違うたまごをとりだした。
「こっちにもあるんだ。でも俺には2つも管理しきれない。だから貰い手を探しててね」
ふ、と笑うサエ。
「でも、私なんかじゃなくても」
「君だから、お願いするんだよ」
ここまで言われたら、引き下がるしかない。
こうして私は、蒼海の王子のたまごを手に入れることとなった。