「ねえ精市、どうして?」
そうやって尋ねてくる彼女の瞳を見る。
その目は純粋で、ほんとに疑問に思った「だけ」で聞いてきたことがわかる。
だけれど。
「…答えられない」
答えることはできない。
万が一、万が一のことを考えて。
「………なん、で…」
「…答える義務がないからだ」
険悪なムードが俺とハユリのあいだに流れる。
ハユリは傷ついた表情でこっちを見ている。
驚き、ショック、そんな感情が顔に出ている。うっすらと涙も見える。
裏切られた、とも思っているのかもしれない。
そんなハユリを見て俺の良心が痛む。
俺はハユリに好意を抱いているし、嫌われるかも、と不安でたまらない。
でも、俺は無表情。あくまでも答えられない。を突き通す。
「…それじゃあ、ハユリは俺がなんで色々知っているかを教えたら、ヘビーボールの中の奴のこと、教えてくれるかい?」
ぐっとつめより逃げ場をなくす。俺と彼女の距離は30センチもない。
一応保険に、とボールの中のシャンデラやペンドラー、ヘビーボールの奴は出られないように俺のポケモンに技をかけさせている。
「っ…!!それは…」
さっと目をそらすハユリ。
…これ以上脅す必要はないだろう。
「…なーんてね。ごめん、怖がらせて。でも人には知られたくないことがあるだろう?」
そう思ってふわり、と笑えば、ふっと肩の力を抜きおずおずとこっちを見上げ頷くハユリ。
「せい、いち…ごめっ…」
そしてさっきまで目に溜めていた涙が一筋流れ落ちた。
「大丈夫だから、こっちこそほんとごめん。」
ふるふる、と首を振りハユリは
「ちょっと、顔洗ってくるね」
と言って、かけていった。
俺はふぅ、とため息をつく。例えあの時彼女がyesと答えても別に構わなかった。
そのときはヘビーボールの中のやつを潰せばいい。あいつさえいなければ大丈夫。
ハユリにばれることはないだろう。数日過ごしてておもったけれど、彼女はそういうことに気づかない。
…自分が、狡いことを言っているのは分かっている。
でも。こんな手を使ってでも言いたくないんだ。
「ほんとはよそ者なんか、きらいなんだよ。そう、大っ嫌いなんだ」
なのに彼女は俺にとって嫌いじゃない「よそ者」だった。心を開いてもいいと思った。
一緒にいたいと思った。ハユリはたかがあんな質問に、と思っているのかもしれない。
でも、もしもの時のために警戒しとかなければ。
これを知られるわけにはいかない。バレるのは危険だから。特にハユリ…よそ者には。
弦一郎にも、蓮二にも教えていない、俺の目的を。
*
シリアス展開。
結構今後の重要な話だったり。
シェイミは、黙っているだけでいます