「やっと来たな」
あの二人から離れ、奥へと進むこと約20分。
そこには、涙目になった金ちゃんとふっと笑った蔵之介君が少し高くなっているところに立っていた。
「うえ…ねーちゃんや…」
「金ちゃん泣いたらあかん。負けたのは金ちゃんやろ?」
「お、おん…ガルでもねーちゃんに勝てやんかってん」
「せやろ?やったら、泣いたらあかん。ハユリが困っとんで」
「う…ねーちゃん堪忍な…」
「ううん、大丈夫だから」
そう私は金ちゃんに微笑み、そして蔵之介くんに視線を移した。
「ええわあ。ハユリの目。本気で挑んでくるトレーナーの目や」
「こっちも、全力で行かなきゃいけないもの」
「せやな。それは俺も同じやわ」
そう言って、ストッと下に降り立つ蔵之介くん。
そのオーラはさっきまでの穏やかな雰囲気とは違い、真剣さをまとっていた。
「改めて自己紹介するで。俺はここのジムリーダーの白石蔵之介や!使うタイプは草タイプや。んじゃ、始めよか!」
「ええ!」
そう言って私はモシを出す。
「シャンデラか…自分のシャンデラもええ目をしとるな」
「お褒めの言葉、ありがとう。そっちのポケモンは?」
「ふっ…たのむで!!ロズエル!!」
そう言って蔵之介君が出してきたのは、ロズレイドだった。
「私、てっきり毒タイプ使うと思ってた!」
「さっき、草タイプ言うたけど正確には草・毒タイプ両方もつポケモンを使うんや」
「なるほどね…!」
「それじゃあ、いくで!ロズエル、あまごい!!」
ポツリ、ポツリと降り出したかと思えばザーッ、っと降り出してきた雨。
…にしても、なぜ降らせたのだろうか。
ロズレイドは草タイプ。にほんばれにしたほうが絶対いいのだろうに。
「モシ、はじけるほのお!」
モシは私の声にこたえて、技を繰り出す。
だけれど、雨の威力が強く、技は相手に届く前に消えてしまった。
「ロズエル、ウェザーボール!!」
そんなこっちに反応することなく無表情でロズエルに指示を出す蔵之介くん。
その指示に私はハッとした。
ウェザーボールは、天気が雨の時水タイプになる上、威力が二倍になる。
よって、威力は100だ。
「よけて!モシ!」
そう言うけれど時すでに遅し。
命中、してしまった。