「…誰ですか?なんで、私のことしってるの?」
「ん?いや、人違いだったみたいだ」
そう言ってにこ、と笑う彼。
「それと、俺は精市。よろしくね、」
「あ、うん…私はハユリ。シェイミはあなたの?」
「うん。そうだよ」
「やっぱり。柔らかい雰囲気だし。かんしゃポケモンのシェイミを手持ちにしてるんだから、きっとすごい人なんだね、精市は!」
「ハユリにそんな印象持ってもらえるのはみーのおかげでしゅ、せーいち!だからみーに感謝するでしゅ!」
「え?俺に感謝しろって言うの?」
「う……せーいちはコワイでしゅ……ハユリ、気をつけるでしゅ!せーいちはよく怖くなるでしゅ…」
「んー?シェイミ、口は謹んだほうがいいよ?それとも、そんなに寒いところに行きたいのかい?」
「うええええ…やっぱりコワイでしゅー!」
「え…と…」
「ああ、ハユリ。これは躾だから。ね?」
「うん…」
そっか、精市は教育熱心なのか。
「シェイミ、すぐ感謝しろだの、なにかよこせだの言うから…。これでもよくなった方なんだ」
「へえ…でも、かわいいからいいじゃない?」
「ふふ…女の子らしい考え方だね」
「そ、そう?」
女の子らしいとか初めて言われた…!
「そ、それはそうと、こんな花畑があるなんてこの地方はすごいね…!」
「君は、別の地方から来たのかい?」
「え、うん」
「へえ…」
そう精市が答え、沈黙が流れる。
沈黙を破ったのは精市だった。
「そうだ、ハユリはシェイミがテレパシーで人と同じ言葉喋ってるけど動揺しないね」
「え、まあ…」
「それって、今外に出してない残りの一匹のポケモンと関係あるのかな?」
「え…」
どきっとした。
痛いところを突かれたから。
そして、もう一匹手持ちにいることを見抜かれたから。
これが、ボールを3つしか腰につけてなかったらわかる。
でも、私は空のボールもすぐに捕獲できるよう腰に付けるようにしているのだ。
今は、手持ち3匹と、空のボール3つ。
最大6匹を連れて歩けるのだから、傍から見たら手持ちが6匹いると思うだろう。
なのに精市は見抜いた。しかも、数まで。
「…なんで、そう思う…の?」
喉から絞り出し、紡いだ言葉。
これしか、言葉が出てこなかった。
*
黒くて白い幸村さんをめざしております。