「…いきなり、ごめんね」

じゃあ、


そう言って帰ろうとするリンカの腕を、ぱしっ、と反射的に掴む。

「……待って」

「っ…、」

「俺も話も聞いて?リンカ、言い逃げは、ダメだよ」

にこ、と笑えば、リンカはちょっと痛いかもしれないけどごめんね、とつぶやいて俺の隣にしゃがんだ。

「リンカ。俺も君のことが好きだよ」

「え…」

すうっと目を見開くリンカ。

「君という人を知ってから。だから…リンカ。俺と、付き合ってもらえませんか?」


「っ…はい…!」




「…でも、本当に、君が俺と同じ気持ちでよかったよ。」

「…私も…。…どうしよう、すごく嬉しい…ゆきむ…んっ…」

彼女の腕を引き寄せて、俺の唇と、彼女のそれを触れさせると、とたんにかああっとリンカは赤くなった。

「これからは、精市ってよんで?じゃないと、言うたびにさっきと同じこと、しようかな?」

「うう…いじわる…」

「ふふ…ねえ、今呼んで?」

「っ…、せい、いちくん…」

「ん?」

「う、うう…って、もう…!みんな茶化さないでよ!」

みんな?

疑問に思って、周りを見回してから気づいた。
今、俺たちがいるところの上には雀の群れが、電線に止まっていた。

「そうか、俺にとって誰もいなくてもリンカにとっては、たくさんの人に見られているんだね」

「うん…」

「まあ、俺はそんなこと全然気にしないけどね」

「ええ!?」



たとえ、何度ぶつかっても。

それが今の俺の願いであり、俺の決意。



…fin.






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