「…いきなり、ごめんね」
じゃあ、
そう言って帰ろうとするリンカの腕を、ぱしっ、と反射的に掴む。
「……待って」
「っ…、」
「俺も話も聞いて?リンカ、言い逃げは、ダメだよ」
にこ、と笑えば、リンカはちょっと痛いかもしれないけどごめんね、とつぶやいて俺の隣にしゃがんだ。
「リンカ。俺も君のことが好きだよ」
「え…」
すうっと目を見開くリンカ。
「君という人を知ってから。だから…リンカ。俺と、付き合ってもらえませんか?」
「っ…はい…!」
*
「…でも、本当に、君が俺と同じ気持ちでよかったよ。」
「…私も…。…どうしよう、すごく嬉しい…ゆきむ…んっ…」
彼女の腕を引き寄せて、俺の唇と、彼女のそれを触れさせると、とたんにかああっとリンカは赤くなった。
「これからは、精市ってよんで?じゃないと、言うたびにさっきと同じこと、しようかな?」
「うう…いじわる…」
「ふふ…ねえ、今呼んで?」
「っ…、せい、いちくん…」
「ん?」
「う、うう…って、もう…!みんな茶化さないでよ!」
みんな?
疑問に思って、周りを見回してから気づいた。
今、俺たちがいるところの上には雀の群れが、電線に止まっていた。
「そうか、俺にとって誰もいなくてもリンカにとっては、たくさんの人に見られているんだね」
「うん…」
「まあ、俺はそんなこと全然気にしないけどね」
「ええ!?」
君と歩む。
たとえ、何度ぶつかっても。
それが今の俺の願いであり、俺の決意。
…fin.