「はぁ…」

自然と口から出てくるのは、ため息。
今は、勉強のため、机に向かっているが、ふとため息をついた。





あれから、1ヶ月が経った。
彼女は、まだ来ない。


俺はあの日から、時々思うようになった。

彼女は、妖精ではなかったのではないのか、と。

こんなことほかの人が聞いたら。腹を抱えて笑うだろう。
でも、そんな考えが頭によぎるのだ。
だから彼女は、花たちの心がわかるのかもしれない。
だから、彼女は俺の前から消えたのかもしれない、と。
むしろ、俺自身がそうであって欲しいと願っているのかもしれない。
リンカが、俺に愛想をつきてどこかへ行った、という考えから目を背けるために。

「はあ……」

本日二度目のため息をついた時だった。


こつん、


「……?」

窓から、小さく何かがぶつかるような音がした。
一体なんなんだろうか。

こつん、


もう一度音がする。
窓を開けてみると、

『ピィッ』

…小鳥がいた。

「…どうしたんだい?」

そう問いかけるも、小鳥は、ピイピイと鳴くだけ。
一体どうしようか。とため息をついたとき。

「……幸村…くん」

遠くから声がした。
声の主は…ずっとずっと出会うのを待っていた、リンカ。



「…いきなり、いなくなっちゃってごめんね」

そういうリンカは一か月前よりも少しだけ、大人びている気がした。

「…どうしたんだい?」

「……私ね、都会の空気に弱いんだ。だから、療養、っていうのもなんなんだけど田舎のおばあちゃんちにいたの」

「…今、ここにいて大丈夫なの?」

「うん。大丈夫。あのね、お医者さんに診てもらった時、精神的なのもあるだろうって言われたの。だから、大丈夫」

自分で納得するようにうなずくリンカ。
…はっきりいって、こっちは話がわからない。

「…どういうこと?」

「…あのね、幸村くん。今から言うこと、一回しか言わないから聞いて?」

そう言うと、すうっと、息を吸い、彼女はこっちをむいた。

「…私初めてここ…幸村くんの家のお庭に来たとき、びっくりした。
だって…他の家と違って、どの花も、自然体で、咲いていたから。
まるで田舎みたいだった。どの花も、負の感情を持っていなかった。都会で心の底から安心できる、初めての場所だった。だから、最初はそんなお庭に訪れるためにここに来ている。そう思ってた。だけど…」

ごくり、と息を呑むリンカ。

「田舎に行って、神奈川から離れて気づいたの。私の中で幸村くんがとても大きな存在だった。幸村くんのいない生活を考えると、ぞっとした。幸村くんのことをかんがえるだけで、体が、熱くなった」

それって、そう思って俺が思わず口元に手を当てるのと、同時に彼女は、「幸村くん、」と微笑んでいった。





「私、幸村君のことが好きです」




俺が、君に一番言って欲しかった言葉を、

俺が、大好きな笑みで。








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