「私はリンカっていうんだ」
次の日、また彼女はやってきた。
なぜか頭に鳥を乗せて。
そして開口一言目がそれだった。
「…え?」
「私はリンカっていうの。私、あなたのことが知りたいわ。だから、自己紹介。」
「…幸村、精市」
「うん、知ってる。そして、私と同じ中学三年生。通っている学校は立海大付属中。あら、残念。家は近いのに。
…へえ、男子テニス部の部長をしているんだ!」
彼女は隣の薔薇の木に触れながら、そう言った。
彼女は、テニスが好きなのだろうか。いや、好きなのだろう。
今彼女が言ったのは全て中学校テニスを知っているなら
知っているようなことだ。
「ああ、でもごめんね。私テニスわからないんだ。」
「…じゃあ、なんで俺のこと知っているの?」
思わず声に出ていた。
だって、じゃないと俺のことを知っている、だなんてありえないじゃないか。
しかも、俺のこと初めて知ったようなくちぶりだ。
「教えてくれたの、この子が」
「…え?」
俺は辺りを見回してみた。
…でも、誰もいない。
「この子?」
「…あ…」
しまった、という顔をする…リンカ…だっけ。
「どういうこと?」
「……あのね、驚かないで欲しいんだけど私、
植物や動物の気持ちが分かるの」
「……」
「やっぱ、気味が悪いよね」
「いや、そんなことないよ。むしろ、素敵だと思う」
植物の気持ちがわかるんだろ?
すごいじゃないか。
彼女の話を聞くには、気づいたときには植物の声や動物の声が聞こえたらしい。
「…じゃあ、昨日は」
「あのときはチョウと話してたの。幸村君のこと、褒めてたよ。いつもきれいにしているって、ここの花たちも喜んでる」
君を知った
君は素敵で不思議な力を持っている、
だけど俺と変わらない中学生。