ほろ苦く甘い朝



今朝。土曜日は草野球の日なので、早めに公園に来た。
今朝も十四松が最初に来てて素振りしてるんだろうな、
と思ったら、大きなカバンをベンチに置いて、その隣にちょこんと座っていた。

「おはよう、十四松くん。」

十四松は初心者のロボットダンスのようなすこしきごちない動きで、私を見た。
どうやら素振りなどの運動をしていたわけではなさそうだ。
二月初旬の公園は、寒い。それでも十四松はげんきだ。

「チロルさん、おはようございマッスル!!」
「寒いねー。いつからいたの?」
「チロルさんがくるちょっと前だよ!」

私はそっと、十四松の手を握る。つめたい。
これはだいぶ待っていたに違いない。

「ねえ十四松くん、ホットチョコレート飲む?」
「ココア?」
「そうそう。コップも用意してたんだからね!隠し味にラム酒が少し入ってるよ。」

十四松に紙コップを持たせ、ゆっくり注いでみる。
彼は目を輝かせながら、コップの中身を見つめていた。

「うわー、あったかーい!いただきます!」

十四松はうれしそうにホット・チョコレートを口に含む。

「チロルさんのココアおいしい!」
「ありがとう。ところでその大きなカバンには何が入ってるの?」

十四松は胸を張って「野球チョコ!」と言ってのけた。
野球チョコ?とすぐに聞き返してしまったが、早い話が友チョコのようなものらしい。

「で、トリュフ?それともデコレーションしたかんじ?」
「 生 チ ョ コ 」

ニヤリと笑ってドヤ顔でゆっくりいうものだから、思わず笑ってしまった。

「十四松くんらしいや!ははは!」
「これね、チームメイトのみんなとチロルちゃんと、おれの兄弟の分しかない!」
「結構作ったね!/笑」

はい、これチロルちゃんの!と言って、十四松は赤い箱を私にくれた。

「義理チョコ?」と、私はニヤニヤしながら言ってみた。
「親友チョコ!」と十四松は笑顔で答えた。

ありがとう、と私は笑顔で受け取った。

「世界でそれ一個しかないからね!」

と、十四松が耳打ちしてくれたので、少し動揺した。

「私のホットチョコレートは本命なのにー!!」

笑顔で十四松の頭をぐしゃぐちゃとなでまわした。





Drink:coka cola zero
BGM:sm27905394



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