だらだらする。

今日のタイヘーちゃんはなにもしませんでした。

4:だらだらする。

ピピピピピピピ。目覚まし時計が鳴ります。
タイヘーちゃんはふわふわのおててで目覚まし時計を止めると、起き上がって、スポーツドリンクの入ったボトルを冷蔵庫から出しました。

「もうちょっとだけ ねる……」

ふわふわであたたかいお布団につつまれて、幸せそうな表情で二度寝しました。
今日は、お仕事の入ってない平日。だらだらするにはもってこいです。
おそとでは忙しそうにバスが行きかい、ラジオのニュースは何かをせっかちに言います。

タイヘーちゃんはふわふわに包まれて、工場のコンピューターの中で見たお母さんうさぎを思い出しました。
ふわふわで、あたたかくて、兄弟もいっぱいいます。
タイヘーちゃんとうたちゃんのAIは、コンピューターの中の世界のお母さんと育ちました。

それは、タイヘーちゃんが生まれる前の日のこと。
お母さんうさぎがひとりひとり頭を舐めて、名前を呼んで、甘い木の実をくれました。
その木の実は木苺で、「あなたたちは大人だから、明日から学校に行くのよ。たまにお母さんも会いに行くわ」と、お母さんうさぎに言われながらすやすや眠ったのです。

次に目を覚ますと、学校のベッドで、ふわふわの小さなぬいぐるみと一緒に座っていました。
そのぬいぐるみは、お母さんのようにふわふわして、どこか懐かしいにおいがしました。
それが、タイヘーちゃんの最初の記憶です。

「……。おはよう」

タイヘーちゃんはもそもそとお布団から出て、枕もとのスポーツドリンクを一口だけ飲んで、棚に飾ってあったちいさなぬいぐるみをだっこして再び眠りました。

「おかあさん……。」

タイヘーちゃんは微笑みながら、夜までお布団の中でうとうとしていました。

「……おなかすいたな」

冷蔵庫からチェリーパイを取り出して、お布団の上に座ります。
冷たくて甘いチェリーパイ。お母さんを思い出しながら食べました。
もうすぐお盆です。お母さんは死んではいないけど、学校に帰ってお母さんAIともあいさつしたいな。
そう思ったタイヘーちゃんでした。


#2023.8.8.18:39

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