タイへーちゃんとわたあめ
ネオンの花街にあるヤーパン街で、5月のお祭りがあった。
ひらひらと鯉のぼりがそこらじゅうを舞い、和服の子供たちが坂道をかけていた。
会社の敷地を町内会が借りており、そこにはいくつか屋台が来ていた。きんぎょすくい、くじ引き、焼きそば屋、わたあめ。
「コノお兄ちゃん、わたあめって なあに?」
タイへーちゃんがわたあめの屋台が気になっているみたいだったから、中を少し覗かせてあげた。
砂糖が勢いよく回転部から飛び、ワタのような糸になるのだ。
「すごい すごい!ぼく これ ほしい」
職人のおっちゃんにささっと電子マネー決済してしまったタイへーは、綿飴の詰まった袋を異次元リュックに入れ、上機嫌だった。
翌朝、タイへーちゃんが珍しくフレンチトーストを焼いた。バーナーでキャラメリゼしていて、相変わらず手が込んでるなと何となく感じた。
「あのね、コノお兄ちゃん。わたあめ、しぼんじゃったの。だから、フレンチトーストにのせて みんなで 弔うの」
タイへーちゃんは寂しそうにパンを6等分にして、小皿に載せた。
「りーちゃんに ぼくのぶん あげるね」
何も知らないりーちゃんは、嬉しそうにかぶりついた。
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