初夏のお味見

とんとんとん。とんとんとん。
タイヘーちゃんがきゅうりを刻んでいます。

「タイヘー、今日の昼めし何?」
「ふふふ。ひんやりだよ」
「教えてくれないのかー」

タイヘーちゃんとタオ君が仲良くお話しています。
その横で、去年作った梅アールグレイ・シロップを解凍して、うたちゃんが梅ソルティドリンクを作っていた。

「うめ!うめ!」
「すもも、うめすき!」
「はいはい。子供達には梅の実を内緒であげようね」

手をパタパタさせて、おくちを大きく開けてうめを頬張るこうたちゃんたち。
小梅ちゃんは幸せそうに笑い、すももちゃんは両手をほっぺたに当てていた。
それを横目で見て、無表情で塩とシロップ、おいしい水を混ぜていた。
カラン。氷が涼しい音を立ててピッチャーの中で回っている。

「タイヘーちゃん、キムチとおいしい氷買ってきたよ。」
「おかえり、コノお兄ちゃん。」

タイヘーちゃんがいつも買い物に使う便利カートにいっぱい、氷と、キムチ1パックを買ってコノお兄ちゃんが帰ってきた。
ドアからは初夏の新鮮な暑さと緑の香りが部屋に堂々と入ってくる。

「今から麺をゆでるから、みんな待ってて。」

 *

タイヘーちゃんとうたちゃん以外のみんなが、布団をはいだこたつに座って扇風機を眺めている。
カタカタカタ、と音を立てて扇風機は首を振る。生ぬるい風ばかりでクーラーをオンにしないのは、今日のお昼ご飯をよりおいしく楽しむためである。

「みんな。できたよー」

ゴトリ。ゴトリ。こたつの上に置かれたのは、美味しい氷が静かに輝く「盛岡冷麺」。
鮮やかなキムチの赤とキュウリの緑がどんぶりを彩り、麺がやさしく揺蕩っている。

「あー うー」
「りーちゃんはキュウリとキムチをたれにつけたやつね。」
「キャー!」

りーちゃんやこうたちゃんの前にも子供用のどんぶりが置かれ、お食事が始まった。

チリン、チリン。風鈴が鳴るその下で、ズルズルと皆が冷麺を夢中ですすった。
りーちゃんだけがキュウリを手づかみで食べ、皆と楽しそうにしていた。


参考資料:梅アールグレイのレシピ
*202405070055

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