ライブハウスのにおい
これは、タイヘーちゃんがコノ君のところに来る前、うさぎの学校を卒業し街のガイドとして働いていた時の話です。
タイヘーちゃんは、トロフィーと呼ばれる、「やったら称号とポイントがもらえるサービス」に夢中でした。
そんなトロフィー集めのお話です。
1:ライブハウスのにおい
黒うさぎのロボットのタイヘーちゃんは、
お仕事の報告書(おわったよ、と偉い人に伝えるための紙)を書き終えて、
よくチェックをして書き残しがないか確認してから、念入りにシャワーを浴びました。
今日は大好きなバンドの音楽の小さなお祭りがあるのです。これを、ライブといいます。
「-♪」
大好きな「火星開拓の唄」を聴きながら、体をタオルでごしごし拭きました。
ドライヤーをブオーッとかけて、自慢の毛皮をふわふわにした後、余所行きの香水をシュ、と一回かけました。
カバンに詰めるものを用意します。
お水、飴ちゃん、ちょっと多めのお金、交通ICカード、タオル、薄手のトートバッグ。
これを大事な小さなリュックサックに詰めました。
最後に、首に青いネクタイをリボン結びで巻いて、精いっぱいのおしゃれをします。
「いってきます!」
お気に入りのスニーカーを履いて、タイヘーちゃんは出かけました。
バスと電車を乗り継いで、タイヘーちゃんは小さなライブハウスに来ました。
看板がチカチカと光り、地下への薄暗い階段が伸びています。
とん、とん、とん。小さな足で一段ずつ階段を下ります。
分厚いドアをぎい、と開けて、受付のおじさんに名前を伝えます。
「予約した タイヘーです!ひとりで きました!」
「一名様ですね」
タイヘーちゃんはチケットをもらうと、飲み物をバー・カウンターにもらいに行きました。
タイヘーちゃんはお酒が飲めないので、ソフトドリンクを頼みます。
「ジンジャエール おひとつ ください!」
バー・カウンターのお姉さんがコップにジュースを注いでくれました。
タイヘーちゃんは壁際でジュースを飲みながら、演奏する人を待ちます。
徐々に人が集まってきて、いろいろな話声が聞こえてきます。
思い思いのおしゃれをした観客たちを眺めながら、開演の時間を待ちました。
やがて、ライブハウスが暗くなります。
演奏が始まり、衣装を着たバンドのメンバーがステージに上がります。
一番前のお客さんは踊り、後ろの席のお客さんは寛ぎながら演奏を見ます。
「ようこそいらっしゃいました!楽しんでいってねー!」
いろいろな音楽を楽しみながら、タイヘーちゃんは夜更けを楽しみました。
ライブが終わり、小さなお店のようなコーナーでCDやグッズを買ったタイヘーちゃんは、
ファストフードのお店でハンバーガーを食べながら思い出にふけります。
自慢の毛並みには、ライブハウスの香りが染みついています。
「かえりたくないなー」
そういいながらも、スマホで帰り時間を調べながら座って夜の風を感じていました。
#2023.8.3.16:23
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