タイヘーちゃんとこげこげ唐揚げ
※残酷な描写を含みます。
「じゅわじゅわー♪ じゅわじゅわー♪」
タイへーちゃんはその日の晩、1人で唐揚げを揚げていた。
「タイへーちゃん、いつもありがとうね」
コノは揚げ物をするタイへーちゃんの頭を撫で、
「お風呂、先に入るからね。待ってるよ」と、悴む手でタイへーちゃんのみみをつまみ、笑顔で言った。
しかし、20分経ってもタイへーちゃんはお風呂に来ない。それどころか異臭がしたため、コノは慌てて風呂から台所へすっとんでいった。
「タイへーちゃん、いる?!」
そこにはタイへーちゃんはおらず、黒焦げの唐揚げが残っていた。
火はガスコンロの安全機能で消えていたが、妙にてかてかした黒焦げの唐揚げがあることを除き、なんにも残ってはいなかったのだ。
コノは急いで服を着て、近所中タイへーちゃんを探したが、どこにもいなかった。
翌日、塞ぎ込むコノに一本の電話がかかってきた。部屋は暗く、寒く、ジリリリリと黒電話が叫ぶ。
「……もしもし」
掠れた、元気のない声のコノ。
「もしもし?コノハズクさん?真夜中にタイへーちゃんがアジシオを借りに来たのですが、なにかありましたか?」
皐月誠吾からの電話だ。
「アジシオ…あっ、唐揚げ」
「唐揚げを揚げていたんですね?「もしもし!コノお兄ちゃん!ごめんね、火事に なってない?!」
「タイへーちゃん?迎えに行くよ」
うさぎの学校 花街支店で待ち合わせをし、アジシオを大事そうに抱えたタイへーちゃんを抱き上げた時に、コノハズクは涙を流した。
「もう真夜中にお塩を借りに行ったらダメだからね?アジシオじゃなくてもタイへーちゃんの唐揚げはおいしいんだから!」
「しばらく 唐揚げはしないの。アジシオ、おにぎりに してあげるね、コノお兄ちゃん」
「ついでにメンテナンスをしておきました。しばらくは揚げ物をしないでくださいね。ツヤツヤの毛皮ですから」
タイへーちゃんは懐っこい様子で、コノの胸にあたまをぐりぐりと押し付けていた。
ネタバレ。タイへーちゃんは一度油に落ちて溶けている。バックアップされたデータで溶ける最中までの記憶が残っており、全ての情報は無事新しい体へ引き継がれている。「アジシオを借りに歩いて皐月誠吾を訪ねてきた」は建前。2024.3.14.18:23
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