しかくい あまい

※8蜜さんの「2回目のバレンタイン」への返信

しかくい あまい

ぼく タイヘー。
アパートの喫茶室「ローズ」で働いてるの。

今年はバレンタインの日も バイトの日なの。割烹着を着て、ナップサックにりーちゃんを入れて、腰にぴかぴかの移動装置を巻いて、朝の5時に喫茶室へ向かったよ。

たくさんあったチョコレートは、前の日に小梅ちゃんと季ちゃんに小さくしてもらいました。
包丁は危ないから、手袋をしたおててで割ってもらったよ。生まれて初めての 料理だね。

「こうめちゃん、すももちゃん、じょうずだね。」
「すもも、ぱきぱきするの すき!」
「こうめも!」
「あした、ブラウニーにするからね。」
「わーい!」「わーい!」
「やけたら 喫茶室で たべようね!」

こうたちゃんたち、お手伝いするの、えらい!

歌いながら チョコレートを湯煎して、たまご、小麦粉、ベーキングソーダ、バター、お砂糖、あと牛乳を混ぜたよ。先にバターと卵、牛乳を混ぜて、溶かしたチョコレートに少しずつ混ぜたよ。それから、粉類をふるったの。ざっくり混ぜて 生地の出来上がり。

大きな四角い型に バターを塗って、クッキングシートを貼ったら 準備完了。ブラウニーの生地を流したよ。あとは オーブンで焼くだけ。

「ふにゃ ふにゃあ」

りーちゃんが何か言ってる。

「おなかすいた?それとも さむい?」

泣いてるわけじゃなかったから、チョコレートの香りで 起きちゃったみたい。

すこし 喫茶室の牛乳を借りて、お砂糖を足して、電子レンジで温めたよ。
スポイトにミルクを入れて、りーちゃんのお口に 少しずつ足してあげたの。

「やむ やむ」
「おいしいね。おいしいね。」

お腹いっぱいの りーちゃんを背負って、ブラウニーが焼けるのを待ったんだ。

「おはようございます、タイヘーさん」

椅子に座って 余ったミルクを飲んでいたら、マギーさんが来たよ。

「おはようございます、マギーさん。」
「なんだかいい香りがするねえ。あたしもスコーンを焼いていいかい?」
「いーよー!」
「ありがと。ブラウニー焼いてるの?」
「うん、たくさんやくの。」
「たくさんかあ。カットはあたしがやってもいいかい?」
「お願いします。たくさんあって 切るの 不安だったの。でも、トッピングは するの。」

マギーさんはにっこり笑って、茶漉しと 粉砂糖と アラザンを用意してくれたよ。
茶漉しに粉砂糖を入れて、腰の風船で浮かびながら粉砂糖を振るったの。さらさらしてた。
アラザンは うさぎのおててだと うまくかけられないから、マギーさんにやってもらったよ。

「タイヘーさん、味見していいかい?」
「いいよ。ぼくも味見する!」

マギーさんと ブラウニーの端っこを食べたよ。

「おいしーい!」
「タイヘーさん、すごいね!」
「あとは ラッピングするよ!」

ぼく、ラップで 丁寧にブラウニーを巻いて、大きい箱に 並べたの。
そしたら、マギーさんがたくさんシールを持ってきて、僕にくれたの。

「貼るだけでだいぶ違うから、使っていいよ」

ぼくのおめめ、キラキラ輝いてたと思う。
後ろに”thank you”のシールを貼って、表には白いハートのシールを貼りました。

「おはようタイヘーちゃん。今日は喫茶室で朝ごはんなんだって?」

眠たくてふにゃふにゃのコノお兄ちゃんをつれて、タオお兄ちゃんが来たよ。

「タイヘーちゃん、ブラウニー焼けた?」

ふわふわと眠たそうに来たうたちゃん。こうたちゃんたちが「ブラウニー!ブラウニー!」ってコールしながらうたちゃんのおててを引っ張ってきたよ。

「こうめちゃん、すももちゃん、ブラウニーはご飯の後にね。お兄ちゃんたちの朝ごはんは、モーニングのおにぎりと卵焼き、お豆腐とわかめのお味噌汁だよ。」

いつもの朝ごはんに似てるようで少し違うメニューに、コノお兄ちゃんのおなかがぐう、と鳴ったよ。

「喫茶店でおにぎり?」
「タオお兄ちゃん、果ての国では よくあるメニューだよ。パンのほうがいい?」
「おにぎりがいいな」
「わかった!」

ぼく 心を込めて、おにぎり握るよ!
お味噌汁はバイトの人が作ります。



お昼の忙しい時間が終わって、こうたちゃんたちをクリーム食べ食べおじさん(ロバート)に紹介したよ。

「この子は季ちゃん、こちらは小梅ちゃん。うたちゃんの子なの」
「そうか。そうか。かわいいね。」

小さなコップに、紅茶とたっぷりの砂糖を入れてもらったよ。子供達は初めてのアフタヌーンティーだよ。

「ロバートおじちゃん、どれ食べていい?」
「小梅はきゅうりのサンドイッチ食べたい」
「好きなものからお食べなさい」

小さな取り皿に、きゅうりのサンドイッチをとってもらって嬉しい小梅ちゃんと、キョロキョロしながら迷う季ちゃん。

「季ちゃんもきゅうりのサンドイッチ、食べてみる?」
「みるー!!」

しゃくしゃくと嬉しそうにサンドイッチを食べるふたりに、「貴婦人だねえ」と喜ぶクリーム食べ食べおじさんでした。

一方で、絵を描きに来た学生さんたちが、ブラウニーとホットミルクで一息ついてたよ。

「うさぎさん、このブラウニーおいしいね」
「ぼく バレンタインデー 好きだから頑張った!」
「これ、毎日食べたいくらいおいしいよ」
「うれしい うれしい!」
「定番メニューに加えたらいいのに」
「検討します!」

学生さんが僕の頭を撫でてくれて、嬉しかった。



バイトから帰って、お風呂を沸かしていたら、お兄ちゃんたちがお仕事から帰ってきたよ。

「ただいまー」
「お兄ちゃんたち、お疲れ様!」
「タイヘー、ハッピーバレンタイン!」

お兄ちゃんたちが、金色でぴかぴかの台形の箱をくれたよ。

「これ なあに?」
「開けてごらん、タイヘーちゃん」

底のシールを剥がして箱を開けたら、金貨がじゃらじゃら出てきて、ぼく びっくり!

「すごい!すごい!ぼく 大富豪だよ!億万長者!」
「タイへーはーしゃーぎーすーぎーw」
「タイヘーちゃん、金貨を割ってごらん」

金貨を割ってみたら、茶色いかたまりがでてきて ビックリした。

「これ なあに?」
「チョコレートだよ」
「すごーい!食べられる金貨だ!」

食べてみたら、おいしかったよ。

ぼく 嬉しくて、お兄ちゃんたちに ブラウニーをあげるの 忘れちゃったの。
お兄ちゃんたちには、15日に あげたの。
朝ごはんの横に添えたの。
お仕事の合間に食べるって言ってた。

#2.15.16:41
#参考:「もっと!ぼくのおやつ」P68

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