お茶とモバイルシーシャを喫する。

今回のタイヘーちゃんは身代わり日記二日目。
ちょっと大人向け表現が入ります。
電子タバコを吸う表現があるため、未成年は読んじゃダメ。

B02:お茶とモバイルシーシャを喫する。

タイヘーちゃんは新ドラマ「家政夫は暗躍す」をママと一緒に見ていました。

「おかあさん、これ、こわい」
「そう?ただのコメディよ」

スマホの先でママは笑います。タイヘーちゃんはぷるぷる震えています。

「そうだ。おかあさん。この間もらったお茶 淹れるね。
 おかあさん オンラインチケット あげる」

タイヘーちゃんは思い出したかのように、ドラマそっちのけでスマホをピコピコいじります。
ピロン♪ ママの画面にティーカップのアイコンが表示されます。

「あら。いいの?タイヘーちゃん」
「いいのいいの。メイド喫茶の おすそわけ。ぼくも飲む。」

タイヘーちゃんはドラマもそこそこに、お水を電子ケトルにゴボゴボいれて、パチっと電源を入れました。

「5ぐらむ。あとちょっと……」

紅茶の葉っぱを計ります。電子スケールで丁度5グラム、フレーバーティーを計りました。

ドラマを見て他愛もない会話をしながら、ティーカップとポットを温めます。
ポットが温まったら、お湯を捨ててしまいました。

「ざー」

排水溝に渦を描いてお湯が流れていきます。
それを見届けた後、新しい熱湯とお茶の葉っぱをポットに入れました。

「ピー!!!!!」

放送禁止用語がテレビから流れます。

「おかあさん、やっぱりこわいよ」
「お部屋に帰って、寝る?」
「ううん、みる。」

ピー。今度はスマホのタイマーが鳴ります。
マグカップのお湯を捨てて、茶こしで濾しながらお茶を淹れました。

「ふー……ひごろのストレスが なくなってくよ」
「タイヘーちゃん、何かイライラすることがあるの?」

お母さんが心配そうに訊きます。

「生きてたら だれでも イライラするよ。」

 *

タイヘーちゃんはドラマを見終え、ママとの通話を切ってお布団に入りました。

しかし、眠れません。

「紅茶の カフェイン つよい」

タイヘーちゃんは窓を開け、ペンライトくらいの小さな箱を取り出しました。
箱にはCHELLERSと書いてあって、つやつやしたピンク色でした。

「チラーズの5番、おいしいやつ」

タイヘーちゃんはキャップをはずし、棒状のもの……ポケットシーシャ(電子タバコの一種)の端を加え、吸いました。

「ふー……ベリーとアールグレイの甘い味、たまに欲しくなるんだよね」

窓際のタイヘーちゃんは白い水蒸気を吐きます。
夜のちかちかと控えめに灯がともる景色に、水蒸気が昇って消えます。
ママには秘密の、ちょっと悪い子のタイヘーちゃんです。

ちょっと甘く感じる水道水を楽しみながら、パソコンを開き、タイヘーちゃんはバイトを探し始めました。

2023.10.10.23:15

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