ハロウィン(2020)




10月31日、この日はカボチャの飾りを船のあちこちに飾る。
そして、その夜は全員で仮装して宴。
昨年のように島に居れば島で仮装を楽しんだが、今回は上陸がまだ先で船の上でハロウィンパーティーの開催となった。

19時から宴を始めるとシャチから言われ、去年と同じように白衣を着ればいいと医務室へ行く。
どうせナマエもナース服に着替えてんだろと思いながら扉を開ければ、そこにはナース服でもなく、つなぎ姿でもないナマエの姿。
その仮装に目を丸くした。

「あ、キャプテンお疲れ様です。私は着替え終わったので出ますね」

後ろ手に扉を閉めて鍵をかけた。
おれの行動に首を傾げると、頭に被っている布が揺れる。

「今年はナースじゃねェんだな」
「はい。今年は戦うシスターです」

シスターの格好をしたナマエが胸の前で指を絡めてギュッと握ると、まるでお祈りをするかの様な動作をした。
こんな格好をした女を見るのは白い町以来のこと。
ふと、昔過ごした教会でのことを思い出しては懐かしく思う。

「キャプテン?」
「…似合ってんな」
「わーい、ありがとうございます」

嬉しそうに笑顔を見せられると、格好のせいなのかすごく清純な雰囲気だ。
すでに散々おれが穢して来ているはずなのに、おれの頭に残っているシスターのイメージが清くて、何も穢れを知らない処女。まさに聖女だというイメージだからこそ、ナマエまでそうなのかと錯覚しそうになる。

そう考えると今度はおれの加虐心が火をついて、その顔を、その体を穢したくなる衝動に駆られた。
おれが口角を上げると何かを察したのかナマエの顔が引きつる。

「きゃ、キャプテン…めちゃくちゃ悪いこと考えてません?」
「くく、どんな事だと思う?」
「恐くて言えませんよ!」

距離を取るかの様に逃げ出した聖女を追いかけてすぐに腕の中に閉じ込めた。

「逃げると追いかけたくなんだろ」
「ちょ、待ってください!キャプテン着替えて!」
「ちょっと遊んでからな」
「遊びません!」

おれの腕から逃げようと両手を突っぱねているが、力な差では圧倒的におれのが上。
腰を強引に引き寄せて体を密着させると、顎を掴んで上を向かせた。

「処女だと思って大切に抱いてやるよ」
「わー!!!待って待って!んうっ」

噛み付く様にキスして、舌を侵入させる。
抵抗する手を弱める為に角度を変えて激しくキスをすれば、おれの思惑通り徐々に抵抗する力が弱まってきた。

キスをしたまま抱き上げて、ソファに押し倒す。
そのまま穢させてもらおうと片手が胸に触れた瞬間、大きなノックが部屋に響き渡った。

「キャプテン、宴っすよー。シスターを解放してやってくださーい」

シャチの声が聞こえてきて、とりあえずゆっくりとキスから解放する。
すでに低酸素状態になっているのかトロンとした表情でぼーっとしてくれているナマエに、今すぐ喰いつきたくて舌舐めずりをした。

「…シャチ、15分待て」
「アイア…危ねェ、キャプテンの命令口調に思わずいつも通り返事をしちまうとこだった。ダメっすよキャプテーン!」

盛大に舌打ちをすれば、目の前でハッとなったナマエがおれの体から抜け出やがった。

「キャプテンの仮装服持ってきたんで鍵開けてくれー、シスターナマエ」
「うん!ちょっと待っててね、シャチ」

そのシスターによって鍵は開けられて、シャチが文句を言い出した。

「あー、ペンギンの言う通りだった」
「ん?」
「キャプテン、もしかしたらナマエの姿を見てムラつくかもって」
「ええっ!そんな予想を…シスター襲うなんて罰当たりだ!」
「海賊に慈悲もクソもないだろ?」

シャチの言い分についくくっと笑ってしまう。
確かに、海賊に神もクソもねェ。
大体、おれは神に祈るのが嫌いだ。…いや、嫌いになったと言えるな。神は何もしてくれねェ。祈ったって何も変えられるねェんだからな。

ナマエと入れ違うようにシャチが医務室に入ってくると、ドアを閉めておれの前へやってきた。

「キャプテンのことだから今年も白衣を羽織るだけとか考えてましたよね?」
「充分仮装だろ?」
「まあ、そうかもしれませんけども!今年はこれ!じゃーん!!」

目の前に広げられた服に首を傾げる。
ただの真っ黒いスーツの様な服に真っ黒いマント。
おれの反応が薄いことに気がつくと、シャチは服をおれに渡した後に持ってきた袋から白い小さな何かを渡してきた。

これは…牙?
ということは吸血鬼か。

「歯にこれくっつければ、見事にヴァンパイアのかんせいです。キャプテンかっこいーから似合うだろーなって」
「へェ…まあ、悪くねェ」
「よっしゃ!」

シスターに喰らいつく吸血鬼なんて想像しただけで気持ちが昂る。今夜は楽しめそうだ。
去年も夜は散々楽しんだが、今年も仮装したまま行為を楽しむのも悪くねェ。

その場で着替えをして、牙を自分の歯に取り付ければどう見ても吸血鬼だ。

「ひゅー!やっぱりカッケー!!」

さァ、聖女様を噛み付きに行くか。

口角を上げて、興奮しているシャチとともに甲板に向かった。





「ハッピーハロウィン!!」

乾杯の代わりにその言葉で樽ジョッキをぶつけ合い、それぞれが酒を飲み干す。
ナマエを探せば、同じシスターの格好をしているイッカクと飲んでいるようだ。
シスター2人組が酒を飲みまくっている姿は仮装とはいえ、なんだか妙に感じる。
楽しそうに話しながら飲んでいるところを見たら邪魔する気にはならず、近くに居たベポとペンギンと話しながらカボチャ料理に手をつけた。

「あれ?キャプテンのシスターは?」
「あそこでもう一人のシスターと飲んでる」

ペンギンに言われて指差せば、ペンギンが笑いながら空になったおれのジョッキに新しい酒を注いだ。
ベポは白熊のくせに包帯をぐるぐると巻いて毛皮を隠しており、どう見ても手負の白熊にしか見えない。

「キャプテン、ヴァンパイアの格好似合いますね。赤ワインどーぞ。シスターの血は飲めました?」

ニヤニヤとしながら楽しそうに聞いてくるペンギンを鼻で笑い、赤ワインの入ったワイングラスを口付ける。

「味見程度だな。今夜じっくり味わう」
「おおっ、さすがキャプテン!言い方がヴァンパイアっぽい!赤ワインとあいますねー、カメラカメラ」
「撮るなよ」

雰囲気にのまれてこの恰好をしたが、今更ながらにらしくないことをしたと後悔した。
まあ、せっかく仲間が準備してくれたのだし、あのシスターをいただけるのであればこの恰好をした甲斐もある。

「ヴァンパイアって快楽に溺れてる処女の血を好むらしいですよ」
「くくっ、どこの情報だよ」
「その服を買う時に店主とシャチがそんなこと話してて」
「ねぇねぇ何の話し?」

ベポがおれの方に寄ってきて話しに入って来たため、そこで話しをかえた。
恐らくこの服を買ったのがそういう大人の店だったのだろう。

昨年は医者と看護師。今年は吸血鬼とシスターか。
仲間たちに遊ばれている気もするが、何だかんだでナマエも楽しそうにしている姿を見れば拒否することは出来なかった。
それに恰好のせいか、いつもより大人しく座って控え目に笑っている姿を見れば、本当にシスターのようで…あれはあれでそそる。
肌の露出がほとんどないというのに、隠されれば暴きたくなるというのも男の性だ。

今夜は去年よりもベッドの上で楽しませてもらおう。
血のように真っ赤なワインを飲みほして、騒ぐ仲間を眺めながらおれも楽しむことにした。





だいぶ酒も進んで、甲板で眠りこけるクルーも増えておれの隣に居たペンギンたちもすでに部屋に戻って行った後。
空になった皿を隣に置いて能力でナマエと入れ替える。

「わっ!あれ?!キャプテン??イッカクは??」
「そろそろ部屋戻るぞ」
「まだ飲みたいですよー」

イッカクの方を見れば隣に空になった皿が現れた瞬間にすぐに察したのか、おれの方を見て手をひらひらと振ってきた。
どうやらこのままコイツをもらってもいいらしい。

「噛みつくぞ」
「噛み…てか、キャプテン欲張り過ぎですよぉ。吸血鬼で外科医で海賊の船長なんて…かっこよさが渋滞してます」

バカみたいな発言に思わず声を出して笑った。
おれの笑い声に驚いたナマエが嬉しそうに「あれ?キャプテン酔ってます?酔ってます?」とおれに身を乗り出して聞いてくる。
腕を掴んでおれの膝に乗り上げさせ、対面座位の状態で座らせると舌舐めずりをした。

「ナマエ、Trick or Treat?」
「んふふ…去年と同じ手にはのりませんよ?どーぞ!」

おれの掌に置かれた飴玉を受け取り、すぐに口の中に放り込む。
がりがりと音を立てて咀嚼をしながらナマエの頬を撫でた。
酒のせいなのか顔が熱くなっていて、外気に触れている頬がこんなに熱いのだから口内はもっと熱いのだろう。

「お前は?」
「え?まさかキャプテン何か用意してくれてるんですか?」

期待に満ちた表情で両手を差し出した聖女。
残念ながらお前が去年のことを踏まえて対策を考えているのはおれも想定していた。

詰めが甘ェんだよ。

「トリックオアトリート!!」

嬉しそうにその言葉を言った瞬間、能力を展開しておれの部屋へ移動する。
大きく目を見開いて唖然とするナマエと共にベッドの上にそのまま着地し、すぐに逃げられないよう覆いかぶさった。
口内に残った噛み砕いた飴玉をナマエの口内にうつすように舌を絡め、しばらく二人で甘ったるい飴玉を味わう。

「んっ、ふ、はっ…ハァ」
「菓子はやったし、次はおれの食事の準備をするか」

何のことか分かっていないようで、呼吸を必死に整えながら小首を傾げておれを見つめる。
激しいキスで涙目になって、ほのかに赤くなった頬。
そんな顔して見つめられればおれの腰がゾクゾクと疼く。

「ペンギンに聞いたんだが、吸血鬼が好むのは快楽に溺れた女の血液らしい」
「っ!しょ、食事の準備って…まさかっ」
「美味しく喰われろよ、聖女サマ」

怯えたような顔が更におれを煽るということをまだ理解していないらしい。
口角を上げて食事準備のために、まずはシスターを穢すところから。
逸る気持ちを抑えこんで、ゆっくりと暴くように美しく美味しそうな首筋に噛みついた。









HAPPY HALLOWEEN!!







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