シャットアウト!

コンビニのスイーツ売り場に吸い寄せられるようにして足を止めた。
部活終わりにアイスを食べるのが日課になっている私はついさっき夏季限定アイスを手に取ったばかりだというのに、大きく書かれた『期間限定!とろけるプリン』の宣伝にすっかり心を奪われてしまった。

……どうしよう。
二つはダメだ。さすがにダメだ。

「もう“どちらにしようかな”で決めればいいんじゃ ねぇ?」
「夜久さん……私は妥協したくないです……!」
「じゃあ二つ買えよ」
「二つはダメですって!それだけはダメなんですって!!」

置いてくぞー?と黒尾さんの声がタイムリミットを知らせた。
気づけば一年生なんかはお会計を済ませてもう食べる気満々で外に出ている。
どうしよう。どちらかを犠牲にしなくては至福の時は得られない……っ!!

「……ナニで悩んでるの?」

ぬっと現れた研磨が問いかけてきた。
私の手にある限定アイスとプリンに目を落とすと、小さくため息を吐いてアイスの方を奪ってしまった。

「ああっ!待って!まだ覚悟ができてないのに!」
「……おれがこっち買うから名前はプリンにしなよ。半分あげる」

そ、その手があったか……!
ありがとう!ありがとう!と何度も頭を下げるのがちょっと面白かったのか、財布を取り出しながらクスリと笑われた。




「ねえ、研磨はそのアイスで良かったの?」

コンビニ前でみんなで一列に座ってどうでもいい話をする中。
宣伝通りなめらかなプリンを口に含みながら聞いてみると、アイスの袋を開ける研磨に「今さらじゃない?」と冷静に突っ込まれた。

「別にいいよ、これも美味しそうだし」
「ねっ。限定だしね」
「限定なのはどうでもいいけど……」

何を言ってるんだ。
限定ってことはレアってことなのに。わかってないなぁ。
もう一口食べたところで研磨が何故か小さく笑った。

「どうしたの?」
「……子どもみたい。クリームついてる」
「えっ、うそ。どこどこ」

慌てて口の端を拭ったけど何もついていなくて。
こっちだよと伸びてきた指先が反対側に触れて、それは躊躇いもなく研磨の唇へと運ばれた。
ぺろりと覗いた赤にぶわり、と耳が熱くなるのがわかった。

「甘いね」
「そりゃ生クリームですからね……?ス、スプーンもう一本もらってこようか?」
「ううん、名前が食べなよ。おれは今ので十分」
「ソッ……ソウデスカ……!」

シャクシャクとアイスを食べる研磨は涼しい顔で、私だけが全身熱くなってしまってる気がする。
これは……あれだわ!きっとアイスのせいで涼し気に見えるのね!?

プリンは想像通り美味しいけど、やっぱりアイスにすればよかったかも……!と羨ましい視線を送ったからか、それに気がついた研磨がそっと口角を上げて食べる?とアイスを私に向けた。

「……いいの?」
「いいも何も、そのために買ったんだし」
「ありがとう……!」

一口、ぱくり。
冷たいシャーベットが口いっぱいに広がってそれはそれは美味。非常に美味……っ!!

「これすっごく美味しいね!プリンも美味しいけどアイスも美味しい!」
「よかった」
「やっぱり研磨もプリン食べてみてよ!ちゃんと半分こしよ!ほらあーん」
「えっ……ん……ホントだ。どっちも美味しいね」
「そうでしょそうでしょ!?二つも食べられるなんてこの上ない幸せ……!ねえ、今度からこうやって二人で食べない?」
「ふふ。……いいよ」

研磨が随分と優しい顔で笑ってるなと思ったら、また指先が伸びてきてベタベタしている口元を拭った。


(おい待てアイツらこの空間が二人きりだと思い込んでねえか??)
(なんなんスか研磨の奴。何で間接キッスしてんスか……ッ!)
(尊いだろ……アレで付き合ってねえんだぜ……?)
(仲が良いんだな。いいことだ)


end.
〜〜〜〜〜〜〜〜
芋子様、リクエストありがとうございます。
『研磨にひたすら甘やかされる』お話とのことでしたが、考えているうちに「甘やかされる……とは?」と迷宮入りしました。
甘やかし研磨っていうよりかは世話焼き研磨……??
あれ……??(白目)
せっかく可愛いリクエストだったのにすみません……!
この度は企画参加ありがとうございました!!
また機会がありましたらよろしくお願い致します。

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