5000打!

届かないのなら、いっそ

もっと、たくさん話したいことがありました。
もっと、聞きたい話がありました。
もっと、もっと、、あなたの傍に、いたかった。









□ ■ □









「なあ、おい。聞いたか?あの噂。」



「ああ……。でも、噂だろ?あの人が処刑されるなんて……。」





今、ここにいる人たちが耳にしている噂。
それは、





「あ、おい名前!」





彼、曇天火が、





「お久し振りですねー、天火さん。」





処刑される、という何ともあり得ない話。





「聞いてくれよー、昨日空丸がなー……」



「あははっ!本当に曇の人達は面白い人ばかりですねぇ。」





一頻り面白い話を聞いて心が満たされてるのを感じた。





『こんな人が処刑されるなんて、嘘に決まっている』









□ ■ □









「お、おい!急げ!早く!」



「ああ、分かってる!」





今日はやけに皆ザワザワしていた。





「あ、あの。何かあったんですか?」



「ああ、大有りだ。









天火が処刑されるらしい……!」









「え……?」





耳を疑った。
あり得ない、どうして!
教えてくてた人達と共に走る。
どうか、まだ、この声が届くことを祈りながら。









□ ■ □









後ろを振り向いて、柄にもなく少し涙腺が刺激された。
ああ、こんなにも、俺の死を悲しんでくれる奴らがいる。
そう思うと死ぬのが少しだけ、哀しい、淋しいと思った。






「天火さんっ……!」





泣いているような彼女の声。
人混みに目を凝らすと、





「天火さん!なんでっ、」





ごめんな、俺はいつか殺されることを分かっていたから。
俺がお前に惚れてしまったから。
俺がお前に話しかけてしまったから。

お前に"俺"という存在を刻みつけてしまう。

それでも何処かで"俺"を残せて嬉しく思っているなんて、なんて、酷い奴なんだろうなぁ、俺は。










□ ■ □









村の皆にいつものような活気がない。
みんな元気に振る舞ってはいるが、否、本当に元気か、と問われたら首を縦には振れないだろう。


だって、太陽はもう、二度と昇らないのだから。











届かないのなら、いっそ






あなたは笑えと言いました。
でも私は、あなたにずっと笑ってほしかった。


この願いすら、あなたには届かない。


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