もっと、たくさん話したいことがありました。
もっと、聞きたい話がありました。
もっと、もっと、、あなたの傍に、いたかった。
□ ■ □
「なあ、おい。聞いたか?あの噂。」
「ああ……。でも、噂だろ?あの人が処刑されるなんて……。」
今、ここにいる人たちが耳にしている噂。
それは、
「あ、おい名前!」
彼、曇天火が、
「お久し振りですねー、天火さん。」
処刑される、という何ともあり得ない話。
「聞いてくれよー、昨日空丸がなー……」
「あははっ!本当に曇の人達は面白い人ばかりですねぇ。」
一頻り面白い話を聞いて心が満たされてるのを感じた。
『こんな人が処刑されるなんて、嘘に決まっている』
□ ■ □
「お、おい!急げ!早く!」
「ああ、分かってる!」
今日はやけに皆ザワザワしていた。
「あ、あの。何かあったんですか?」
「ああ、大有りだ。
天火が処刑されるらしい……!」
「え……?」
耳を疑った。
あり得ない、どうして!
教えてくてた人達と共に走る。
どうか、まだ、この声が届くことを祈りながら。
□ ■ □
後ろを振り向いて、柄にもなく少し涙腺が刺激された。
ああ、こんなにも、俺の死を悲しんでくれる奴らがいる。
そう思うと死ぬのが少しだけ、哀しい、淋しいと思った。
「天火さんっ……!」
泣いているような彼女の声。
人混みに目を凝らすと、
「天火さん!なんでっ、」
ごめんな、俺はいつか殺されることを分かっていたから。
俺がお前に惚れてしまったから。
俺がお前に話しかけてしまったから。
お前に"俺"という存在を刻みつけてしまう。
それでも何処かで"俺"を残せて嬉しく思っているなんて、なんて、酷い奴なんだろうなぁ、俺は。
□ ■ □
村の皆にいつものような活気がない。
みんな元気に振る舞ってはいるが、否、本当に元気か、と問われたら首を縦には振れないだろう。
だって、太陽はもう、二度と昇らないのだから。
届かないのなら、いっそ
あなたは笑えと言いました。
でも私は、あなたにずっと笑ってほしかった。
この願いすら、あなたには届かない。