今までもこれからも


「うーん……。」


スポドリを作りながら頭を悩ませる。


「名前?どうしたの?」
「あ、清子先輩……!すいません!あと少しで終わります。」
「私も手伝うわ。」
「す、すいません……!」
「で?」
「え?」
「何か悩んでるでしょう?」


じっ、と見つめられて言葉に詰まった。


「……なんで分かったんですか?」


堪忍したように息を吐きながら問いかけるとトン、と眉間をつつかれた。


「ここ、シワ寄ってた。それで、何かあったの?」
「……清子先輩、今日って午後、暇ですか?」


そう言うと清子先輩は分かってくれたみたいで「私の家に来る?」と幼馴染みが聞いたらとてつもなく羨むであろうお言葉をいただいた。
その言葉に了承の意を示してからマネージャーの仕事に再び取り掛かった。









「あ、おい名前ー!」
「ん、何ー?」
「今日自主練してくけどお前どうする?」
「あー、ごめん。今日は用事あるんだ。先帰ってるね。」
「そうか、分かった!気をつけて帰れよ?」
「うん!夕くんも、自主練頑張ってね!」


そう言うとキラキラした笑顔でおう!と言い体育館の中へと戻って行った。


「ごめんね名前。遅くなっちゃった。」
「大丈夫ですよ。それじゃあすいません!お疲れ様でした!」


清子先輩と二人でバレー部の皆にあいさつして体育館をあとにした。




「へぇ、西谷の誕生日プレゼント、か…。」
「はい。」


そうなのだ。
来るべき十月十日は私の大事な幼馴染みである夕くんの誕生日。
部活もあるからプレゼントを買いに行く時間も限られているし、まず何をあげるのかさえ決まっていない。
誕生日まであと二週間はあるから考える余裕はあるけれど、


「西谷なら、名前がくれた物ならなんでも喜んでくれると思うわよ?」
「……そうでしょうか……。」


夕くんは優しいから喜んでくれるとは思うけど……。
思い悩む私の様子を見て清子先輩は苦笑しながら


「ちょうど来週の日曜は体育館の点検があるから休みでしょう?その日に買い物に行ってきたら?」


と言ってくれた。


「はい……。あの、清子先輩も、」


一緒に、来てくれますか。と問うと笑って「今度は仁花ちゃんも誘おうか。」と言った。









「それじゃあ西谷先輩の誕生日プレゼントを買いに行くんですね。」


早いもので日曜日。
仁花ちゃんに説明もしないで誘ってしまったから歩きながら今日の予定を話した。


「名前先輩と西谷先輩は幼馴染みだったんですか……。」


意外です、と言われてその後続けられた言葉に固まった。


「付き合っているのかと、思ってました。」
「………!?」


つ、つ、付き合って、私と夕くんが……!?


「ふふ、顔真っ赤。」
「本当ですね……。……っは!これってもしかして言っちゃ駄目でしたか……!?」
「とりあえず二人とも落ち着いてくれる?」







清子先輩に宥められて一先ず落ち着き、買い物が再開された。
それでも、


(意外だった、か)


付き合っている、と仁花ちゃんに言われた時、全身の血が沸騰したのではないか、というほど身体が熱く感じられた。
他人にそう思われるのは嬉しい反面、……少しだけ切なく思う。
付き合っていないことを否定しなくてはいけないから。
そんなことを頭の隅で考えながらふと目に入ったソレ。


「あ、それ、西谷先輩みたいな感じします。」
「そうね。西谷に似合いそう。」


いつのまにか後ろから覗きこまれていて、いいのではないか、という意見をもらった。
値段は少しするが、夕くんにこれをあげたい。


「これ、買ってきます!」


そう告げた私はレジへと走った。
その後ろ姿を温かく見つめる瞳があったことを、私は知らない。









そしてむかえた、夕くんの誕生日。
毎年この日は朝からずっとそわそわしてしまってまともに目すら合わせられない。


「おーっす名前!」
「ゆっ、、うくん。お、お早う…!」


びっくりした。
早速夕くんに会っちゃったよ。
いつもなら夕くんもう少し家出るの遅いのに。
頭の中でいつ渡そうかを考える。
…今、渡せる、かな…?


「ね、ねえ夕く「おっ、ノヤっさんと名前じゃねーか!」


なんてこったい。


「おー、龍ー!」
「お、お早う田中…。」


結局夕くんにプレゼントを渡すタイミングを逃した私は二人と話しながら学校へ向かった。
帰り道で渡せばいい、と思っていた。









あれを、見るまでは。









嫌な汗が背中を伝う。
はやく、もっとはやく。
自分の荒い呼吸だけが道に響く。





『あ、あの西谷くん、少しいい?』
『おういいぞ!どうした?』





私だけじゃ、ない。
夕くんに恋してるのは、私だけじゃない。

体力の限界を感じてゆっくりと止まる。


(夕くん、夕くん、、あなたは、)


いつか、私の隣から、いなくなるの?





「っ名前!」


背中に温もりを感じて振り向く。


「ゆ、う「お前何一人で帰ってんだよ!危ないだろ!?なんで、今日に限って…!」


口を強く結んだ夕くん。


「だって、」


口にしたい気持ちは声にならずに嗚咽に変わっていく。
ポロポロと涙が頬を伝って。
夕くんは驚いたようだけど直ぐに指で涙を拭い始めてくれて、その優しさにまた、涙が止まらなくなる。


「だって、夕くん、さっき、告白されてた!」
「なっ、なんでお前が知ってんだよ。」
「見えちゃったんだもん!」



そう言うと夕くんは


「でもなんでそれで先に帰るんだよ。」
「…気がついたら走ってた。…見たく、なかったんだよ。」
「……安心しろよ。」
「へ?」
「俺はずっと、お前一筋だからな!」
「は…!?」
「お前だって、」


俺のこと、好きだろ?


指摘されるように言われて思わず荷物を落とした。


「なあ、好きだろ?」
「ちょっ、もう、やめて!」
「モガっ!ちょ、お前、何、」
「た、誕生日プレゼントだよバカ夕!」
「は、てめバカって!」
「…誕生日、おめでとう夕くん。わ、私もその、ずっ、ずっと夕くん一筋です。」
「!!」


だから、


「これからも、ずっと、隣に居てもいい?」
「あったり前だろ!ほら、帰るぞ!」


差し出された手を握り返し幸せを噛み締めた。





今までもこれからも


(ずっと、一緒だからね!)










おまけ☆


「おおおお!ついにくっついたかあいつら!」
「ちょ、田中声デカイって!」
「長かったねー、見てるこっちがもどかしかった。」
「…あの二人付き合ってなかったんですね。」
「やっぱり月島は分かってたんだ?」
「見てれば分かります、あの二人すごく顔に出てましたから。」
「「「(全然気づかなかった…。)」」」
「よし!それじゃあ俺達も帰るぞ!」
『うぃーっす!』


終われ(^q^)

10/10 西谷夕 Happy Birthday!!

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