愛して愛してまだ足りない
※学パロ
「ねえねえ蒼世。」
「なんだ。」
「ねえってばー。」
ツンツン、ツンツン
蒼世のことをずっと呼んでるのに彼は此方を見るどころか先日学校で分けられた夏課題をひたすら解いている。
彼女より課題が優先されるなんていかにも蒼世らしい、けど。
部活がいつもある剣道部の久々の休みに彼女をほおって課題をやるのはひどいよー。
「だったらお前も課題をやればいいだろう。」
「むー。私はちゃんと計画を立ててあるからいいもん。」
はぁ、ダメだ。
完全に相手にしてもらえない。
「……名前?」
「なぁに、蒼世くん。」
「こんなところで寝るなよ?」
「寝ないし!雑誌読んでるから、終わったら少しは相手してよね!」
と言ったはいいけど、
(眠い……)
寝るなって言ってたけど蒼世今集中してるし少しくらい寝ててもバレないよね?
急激に訪れた睡魔に抗うことすらせずに意識を手放した。
□ ■ □
ようやく一区切りがついて名前を見ると予想通り寝ていた。
(全く……、寝るなと言ったのに)
呆れながらも自分の上着を彼女に掛け、その細い身体を抱き寄せる。
自分にもたれるようにしながら読みかけになっていた小説を読みながら眠っている彼女をチラリと見る。
そして溜め息。
……あまり無防備に寝られると俺が困るから寝てほしくなかったのに。
まあ彼女は俺がこんなことを思っているなんて少しも想像していないのだろう。
─────この白い身体を組み敷いて、声が枯れるほどに鳴かせてやりたい、なんて。
ふぅ、と息をついて読みかけの小説に再び栞を挟んでパタン、と閉じる。
今のまま読んだところで内容など頭に入るわけがない。
「う、、ん。蒼、世……。」
「!……寝言、か?」
穏やかな表情で寝ている名前の口から自分の名前が紡がれたことでさえ心を満たしていく。
「ほんとに……どっちが好きすぎるんだろうな。」
くびもとに顔を埋め髪で見えなくなっている位置を強く吸い上げる。
そこに咲く綺麗な紅い華。
名前が起きたらどれ程俺がお前を愛しているのか、きちんと教えてやろう。
愛して愛してまだ足りない
「……え、あれ、蒼世?」
「ようやく起きたのか?全く、寝るなと言ったのに。」
「あ、う、うん。ご、ごめん……!」
「別にまだもたれててもいいぞ?」
この気持ちに限度なんてない、ということを、な。
お題提供先:
蝶の籠様