いつか君に会えたなら


中学校三年間、同じクラスだった男の子。
目付きが悪くて口も悪かった人。

でも、根は優しい人だと知っていた。









『………おい。』



『!?な、なんでしょうか……?』



『……これ。』





ずい、と突き付けられた右手。
その手には無くしたと思っていた私の消しゴムが握られていて。





『あ、ありがとう!』





これがきっかけで彼、影山飛雄くんと少しずつ話すようになった。









『へぇ、影山くんってバレーでセッターやってるんだ。』



『ああ。お前、バレー分かるのか?』



『まあ、人並み程度ですケド。』





テスト前とかは二人で勉強したりもした。





『なぁおい、この計算どうしてこーなんだよ。』



『あぁ、これはこの式にXを代入して……。』



『…………。』



『影山くんお願いだから目あけたまま寝ないで。』









そんな彼だけど、中学三年生のある時から突然変わってしまった。
………突然、というのは少し違うけれど。


三年生になって最後の大会に近づくにつれて身に纏う空気が変わっていった。


そして、試合に敗退してしまってから彼は、私を視界に入れることをやめてしまったのだ。
前までは挨拶をしたら何かしらリアクションをしてくれたのに。



彼から拒絶されて、心の奥のどこか柔らかいところをぎゅうう、とわしづかみにされたように感じた。









□ ■ □









チームメイトである彼等と試合に負けてしまってから、彼女、名前と話すのが怖くなった。


あいつはよく笑う奴で、俺なんかと話す時にも時折笑顔を見せてくれた。
最初に話しかけた頃は少し張り付けたような笑みだったけれど、沢山話をするようになって、彼女の色々な表情(かお)が見れた。



彼女と話すのがとても心地よくて、俺はいつの間にか彼女にひかれていた。









でも、


試合で仲間に拒絶されて、恐怖を覚えた。
勿論、トスの先にスパイカーがいないのは心底怖い。
でも、それ以上に、彼女に拒絶されたらと思うと恐ろしかった。




あいつは笑っていたけど内心俺のことを疎ましく思っていたら?




彼女は優しいからそんな表情は俺には絶対に見せないだろう。


だから、離れようと思った。
彼女に拒絶される前に。





今思えば、本当に最低なことをしたと思う。
避けられるのが怖くて自分から名前を避けるなんて。
俺が、拒絶した時の彼女はとても悲しそうだったのに。

なのに、ずっと、それこそ卒業まで、それを続けた。



ただただ彼女の視線に俺が入らないように。









□ ■ □









卒業と同時に東京に引っ越すことが決まっていた私は、卒業式の日にどうしても彼と話をしたかった。
けれど、それすらも叶わなくて。
彼に気持ちを伝えることも出来ずに高校生になった。



入学した音駒高校には男子バレー部があると知っていたため、マネージャーをやろうと前から決めていた。


バレーに関わっていたらいつかまた彼に逢えるかもしれない、そう思いながら。





いつか君に会えたなら




(その時はありったけの気持ちを全部ぶつけてやるんだ)

(君のことが好きだ、って)











僕の知らない世界で様に提出させていただきました。
ありがとうございました!

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