「白子さん、私も行ってきますね。」
「え!?名前!?」
驚いている白子さんの脇をすっと走り抜けて二人を追いかける。
まだあまり遠くへは行っていないはずだし、走れば追いつける!
よかった、着物だったらこんなに身軽に走れない。
「あっ……!」
二人とも、いた!
よかった追いついた、と安心した────────瞬間。
倒れていた男が立ち上がり、空丸くんの命を、狙う。
「殺す、、殺してやる、、。」
うわごとのようにそう呟きながら。
ゆっくりと男は剣を抜き、
「空兄!?」
「来んなっ!」
「ひ、ひひ……!」
……ほんと、
「ゲスな野郎だな。」
自分でもすごい低い声が出たと思った。
こんな低い声、久しぶり。
滑らかな動作で男の後ろに回り込み竹刀を打ち付ける。
「ぐはっ……!」
意識を失った男は再び地面へ。
「─────空丸!大丈夫か?」
「─────……え、兄貴?え?」
天火と空丸くんを遠くから眺める。
……彼は、少なからず昔を見たのだろう。
自分の、両親の事を。
どうしても、やりきれないと思ってしまう自分が憎い。
みんなは彼の事を仲間だと思っているのに。
「悪い白子。あと頼むわ。」
「ああ。」
ねえ、白子さん。
「おい、名前。」
背筋がぞわりとするような低い声。
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