バシッ、ガン、ガッ
庭から聞こえる、稽古の音。
「うーら、どうした?腰が退けてるぞ。稽古だからって手ぇ抜いてんのか?」
「うるせぇ!」
天火と空丸くんが闘ってるのを見て、体が少しだけ疼いた。
(私も久しぶりに、竹刀とか持ちたい。)
これでも中学まで剣道部でしたよ。
まあ、高校に剣道部がなくて、帰宅部だったけどさー。
それでも、体力作りとしてたまに走り込んだり、素振りをすることは続けていた。
(今度天火に稽古つけてもらおーっと。)
そんな事を考えている間に、二人の勝負はついたみたいだった。
「お前の剣は軽いんだよ。そんなんじゃ罪人どころか誰一人相手できねぇぞ。」
「─────くそ。」
………天火の言っている事は正しい。
空丸くんの剣は"まだ"誰も守れない。
「……………どうしたの?顔がにやけてるけど?」
白子さんが少し引き気味の様子で尋ねてくる。
「え"っ!?私にやけてましたか!?」
不覚、全く無意識だった。
「うーん………。にやける、っていうのは少し違うかも。口の端が上がってたからニヤリ、かな?」
「それ更に悪くないですかね!?」
即座にきりかえすとあはは、と白子さんは笑って
「稽古もいいけど怪我はしないでくれよ。……………って遅いか。」
「ちょっ、天火!宙太郎くん!そこまでにしなさい!」
宙太郎くんぼろぼろじゃない!
「ほら、手当てするから宙太郎くんはこっちに来て!」
はーい、と間延びした声をあげて此方に駆けてくる宙太郎くん。
「じゃあ白子さん、後お願いしますね!」
「うん、宙太郎の事、よろしくね。」
任せてください、という風にコクリと頷いて部屋に入った。
「………ねぇ、宙太郎くん。」
彼に、聞いてみたい事がある。
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