小説 | ナノ




『家族』と呼ばれて嬉しいと思っている自分がいる。
本当の『家族』を置いてきてしまった自分は、




「おーい。俺を置いて自分の世界に入るなよ?」



ここに居たいと願っている。



「わ、たし。」


「ん?ちゃんとこの天火様が聞いてるから、大丈夫だ!話せ話せ!話せる事話せば、少しは楽にならぁ!」



からからと笑う天火。
ああ、こういう人は迷わないんだろうな、と漠然と思った。




私は、迷っているんだろう。


自分の事なのに他人事なのは、自覚がないから。
ふとした瞬間に考えこんでしまう。
その自覚がないから。




「…………お前は、帰りたいのか?」


「っえ?」


確信をついた天火の言葉に少なからず動揺した。

そしてその様子を見てやっぱり、という風に天火は話す。



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