『家族』と呼ばれて嬉しいと思っている自分がいる。
本当の『家族』を置いてきてしまった自分は、
「おーい。俺を置いて自分の世界に入るなよ?」
ここに居たいと願っている。
「わ、たし。」
「ん?ちゃんとこの天火様が聞いてるから、大丈夫だ!話せ話せ!話せる事話せば、少しは楽にならぁ!」
からからと笑う天火。
ああ、こういう人は迷わないんだろうな、と漠然と思った。
私は、迷っているんだろう。
自分の事なのに他人事なのは、自覚がないから。
ふとした瞬間に考えこんでしまう。
その自覚がないから。
「…………お前は、帰りたいのか?」
「っえ?」
確信をついた天火の言葉に少なからず動揺した。
そしてその様子を見てやっぱり、という風に天火は話す。
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