運命とか、簡単には信じないけど
「栗山未来です」


初めて会った時、こんな小さな子が呪われた血の一族の最後の一人と聞いて驚いた。
それは唯と桜も同じだったみたいで「信じられない…」と唯が呟いたのが聞こえた。
栗山未来が部屋に連れて行かれた後、唯は母親に呼び止められていた。
ちらりと母親の顔を見るとその顔は何か不気味な物でも見たように歪められていて、さっき彼女が出て行った扉を見つめていた。


「行こう桜」
「う、うん…」


桜にはあの顔を見せたくなくて急いで桜の手をとり部屋を出た。









「唯お姉ちゃん、何でお母さんに呼び止められたのかなぁ」


香織お姉ちゃん、分かる?と首を傾げる桜に曖昧に笑って答えを濁した。
大方、あの子に近づくな、とでも釘を刺したんだろう。
でも、


(唯は優しいし、一度決めたら絶対に自分の意見を変えないからなぁ、)


揉め事にならなきゃいいけど。
桜にバレないようにこっそりと溜め息を吐いた。









桜を部屋に送ってから栗山未来について考えていた。


(あの子の目、)


全てに絶望しているような、怯えているような、色々な感情が混ざっている目。


(私は別に何も言われてないし、いいか)


彼女に、栗山未来に、会いに行ってみよう。









未来side


此処も、変わらない。
私のことを『化け物』としか認識しない。
このことを諦めてしまったのはいつだっただろうか。
家族が死んで独りぼっちで。
引き取られた家では自分の居場所なんて何処にもなかった。
目すら合わせてもらえない、自分は『いらない』存在なのだと心底実感した。


苦しい、辛い、寂しい。


自分の身体を守るように小さな手で膝を抱えた。
其処へ世界を遮断するように顔を埋めた。


どのくらいそうしていただろうか。
控えめに扉がノックされて、反射的に身体が震えた。


「未来ちゃーん。起きてるー?」
「ぁ、ぇ、」


名前を呼ばれたのなんていつぶりだろう。
ずっと呼ばれなかったから無駄に緊張してしまった。


「開けてもいいかな?」
「…どうぞ」


小さい声で返事をしてしまったけど、どうやら外にいた人には聞こえたようで扉がガチャリ、と開かれた。
其処にいたのは赤みがかった茶髪をポニーテールにしている女の子で、そういえばさっき自己紹介をした時にいた子だ、と纏まらない頭で考えた。


未来side end


prev next

bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -