Coccinelle | ナノ


▼ 星屑みたいな願いの欠片

あ、てんとう虫だ。

受験勉強にバイトに委員会に、最近の私は時間に追われていた。そんな休みのある日、去年より減らした週1のバイト先に向かう途中にその子を見つけた。丸く赤いフォルムに黒色の点々をつけた子がちょこちょこしてる。かわいい子を見つけたーと、携帯で写真を撮ってみた。その子を指先にちょこんとつけると更にかわいく見えた。

高校から近いうちのバイト先は、よく学生が寄って行く場所だった。でも、更に近いところにコンビニが出来て年々学生は少なくなっていってる。店長は嘆いていたけど、おじいちゃんおばあちゃん達、常連さんがいつも来てくれて私は嬉しい。

「いらっしゃいませー」

「あ…」

聞き覚えのある声に視線を送ると哲也だった。

「珍しい!哲也の私服姿!」
「…いつものノートまとめて買いたいんだが」
「いいよいいよーまけとくよ〜」
「怒られるぞ」

笑いながら、レジをうっていると他にも男の子達が外にいたと気づいた。うろうろしてたり、コンビニで買ってきたのかアイスも食べている。いいな…私もたべたい。

「皆いるの?仲良いね。」
「まあな…純もいるぞ。」
「…」
「もう、来ないつもりか?グランドに」
「行きたいけど、私、ダメだよ。なんかもう真っ直ぐに応援出来ないよ。純くんのことまだ好きだから。」

フラれてるけど、諦めきれない。もう、こんなの私らしくないのは私が一番わかってるのに、踏ん切りつかない。純くんの初恋の女の子なら、こんな時どうすんの??あ、彼の初恋の時点で、フラれはしないか…

「別に、良いだろう。」
「何がよ?」
「野球部の応援は出来るだろう。」
「口実つけて行けって言うの?迷惑でしょ。」
「もう部員は慣れてる。それにいつものがなくなって調子が狂う。」

何それ。なんか、本当にこの人はマイペースというかなんというか…つい笑ってしまう。ノートを紙袋に入れて押し付けると、私の様子を見て哲也もつられて笑っていた。
主将直々のお願いを無下には出来ないよね。今度の休みは見に行こう。受験勉強なんて糞食らえだ!!

 ̄¨
次の日、久々にまた練習を見に行き、純くんにバレないようにそそくさと帰った。私は何食わぬ顔でクラスで過ごして、純くんの何も気づいてない様子に密かに喜んだ。それで調子にのった私は少し声を出したり、休みの日の練習試合の日にはOBの観客の方々と呑気にお喋りして観戦するようになっていた。私も受験勉強とバイトがあるので毎日ではないが日常が告白前に戻りつつあったある日、ついにばれた。

「おい、浦井。」

先生から出された課題とにらめっこして、純くん直伝の眉間のシワを私も寄せていた。この無理難題に加えて私の語彙力が伴わない。と悩んでいた矢先、彼の声がした。

大好きな声だ。
純くんに私はつい笑顔になる。あ、癖になってる。

「この前、来てただろ。グランドに。」
「違うの!私はもう、そういうことじゃなくてさ」
「何がちげぇんだよ!」

怒られるのはいつものことだけど、ちょっと待ってよ。心の準備が出来てない。まともに話すのは体育の授業以来だ。

「私、野球好きになれたんだよ。喜ばしいことでしょ!」
「誰が喜ぶんだよ。」
「哲也がさ、私いないと調子が狂うんだって。四番のピンチは青道のピンチだよ。私、ムードメーカーでも、アルプスの応援団長でも何でもするから!」

お願い、見させてと手を合わせ頭を下げた。
本当なら彼氏になった貴方を応援したかった。この最後の夏になる貴方の姿をさ。でも、ダメじゃん。私じゃさ。

それなら、せめて見守らせてよ。
お願いだから。

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