Coccinelle | ナノ


▼ 平凡な日常は非凡さを隠してる

「何で、浦井のことふったの?」

昼休みに入り、人がまばらな教室で、亮介は爽やかな笑顔で伊佐敷純に問いかけた。突然の問いかけに狼狽してしまう。
情報が早くねぇか?
浦井はたしかに落ち込んでいる。俺があいつを見ていたとして、視線が合えばいつもなら嬉しいことを隠さず浦井は口許を緩めるのが常だった。今は、見ていられなくて浦井を避けてる俺が言うのは定かじゃないけど、俺を必要以上に呼ぶ声がしない。明るさだけが取り柄みたいな浦井は野球部の応援に顔を出さなくなってしまった。
自分でふったくせに、俺を追いかけるあいつが居なくなった日常がひどく味気ないように思う。

「嫌いなわけ?」
「そんなわけねーだろ!」

あ…
浦井の告白から俯き加減で、拳を握り自分の決断には間違いが無かったと考えていた。そのはずだったのに、とっさに出た言葉は滑稽だった。
なあ、俺がふっきれてなくてどうすんだよ。

「じゃあ、好きなの?」
「…野球で相手してやれねえから」
「そんなの、ただの言い訳だよね。」

図星だった。浦井を適当な理由でかわせても、この男にはわかるんだ。容赦ない物言いに、動揺して冷汗がでていた。

「テキトーなこと言ってると、哲にとられちゃうよ。」
「何で哲の話に…」
「知らないの?同じ中学で、今でも名前で呼び合うほど仲いいの。」

は?なんだそれ…俺を追いかけるのはいつも浦井だった。思い返してみれば、浦井は一年の時には同じ中学のよしみで物を借りに何度か哲の元へ来てた。哲と違うクラスになってからは、それほどあいつらの交流なんて見る機会なんてなかったし、あったとしても気があるように見えなかった。とられるってなんなんだよ。哲が浦井を?ないないない。万が一好きになることがあったとしても、浦井は俺のことを好きなんだ。

「純は、どうしたいの?」

その問いになにも答えることが出来ず、授業が始まってしまった。

そうだ…彼氏でもない俺の側に今まで通りみやびが側にいてくれるとは限らないんだ。
分かっていたようで分かっていなかった。あいつが側にいることが当たり前になりすぎて、俺は受け止めきれなかった。

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