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▼ 春爛漫の告白

春の麗らかな日差しの今日この頃、私は伊佐敷純を呼び出し、顔は茹で蛸のように真っ赤になっていた。

「伊佐敷純くん、好きです!付き合ってください!」


「…悪い。俺、今そういうこと考えらんねぇ。」「う…」
「浦井、勇気出してくれたのにごめんな。」
「…」

高校3年生の春、私は大好きな人にフラれてしまった。

大好きな人に告白するって高校生の私にとっては一大イベントだ。友達も応援してくれるし、お化粧とまではいえないけど眉毛整えて書いたりとか少しでも綺麗に見えるようにうすーくBBクリーム塗ったりとか、ナチュラルなカラーコンタクトとか教えて貰えることは教えてもらって精一杯綺麗にしたつもりだった。

でも、どんなに着飾って大人になったつもりになったって、心、中身のともわない人間はダメなのかもしれない。

「私のこと嫌い?それとも、野球があるから?純くんのこと絶対に邪魔しないから!」
「デートも連絡もまともに出来ない奴といて、楽しくないだろ。」
「そんなこと…ない。」
「無理すんじゃねーよ。」

伊佐敷純は強面の普段の彼からは想像つかないほど不器用にも優しく笑って、ごめんな。と繰り返した。
露呈してしまう自分の底の浅さにがっかりした。伊佐敷純ともし恋人らしいことが出来るなら夢のように嬉しいと思ってたからだ。

苦し紛れに出てきた言葉。

「じゃあ、好きな人いるんでしょ!」

彼はこの言葉に少し怒ってしまったのか、その場を立ち去ろうと踵を返す。あ…私地雷踏み抜いちゃったのかな。

「…いねーよ。」

そう言って帰ってしまう彼の背中を追いかけられなかった。

私の好きになった伊佐敷純は、クラスメイトで教室ではうるさくて、でも話しやすくて優しい。そんな彼は野球部で頑張っている。白球を追いかけるその姿と、どこにいたとしても届いてしまうような大きな声、真剣に球を打つ姿は、勉強も運動も出来ない私からしたらどれをとっても、かっこよかった。好きになったのは去年で、最初の内は少しでも話したくて、些細なことでも話にいったり彼がクラスで何かをやろうものなら横目でも遠目でも追いかけた。ちょっとでも、彼と授業中に目があって私はにやけそうな表情筋を隠そうともせず、彼の集中しろと怒った目線を感じていた。何をとっても彼の言動が嬉しくホントにホントに大好きなのだ。

私は段々、野球の応援によく行くようになり、ついつい自分も白熱して応援するようになった。周りからは白い目で見られるほどだった。それほど興味なかったのに、彼の愛する野球をめちゃくちゃ勉強したし、彼の姿を一分一秒でも多く目に焼き付けたかった。まあ、伊佐敷純、直々に先生に頼むほど迷惑かけてたけど…それでも出禁にならなかったのは彼の計らいに違いなかった。

大好きだよ、一番だ。
こんな風に言えてたの、心の中では。
でも、告白のとき、いつもの有り余ったパワーの欠片もない、捻りのない、ありふれた言葉しか口を衝いて出てこなかった。
諦めなければいけないの…こんなにあっけなく私の高校生活は終わるの?

「切ない」

私の声はむなしくも春の青空と花弁を連れ去るような風に、かき消されていった。

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