Coccinelle | ナノ


▼ 太陽は暗雲でも笑う

本当のことを伝えて、俺はそれからただ必死で、監督の試合前ノックの時にはもう覚悟ができていた。
全てを出しきった。
だけど、お互いに譲れない思いをぶつけ合った結果の末、夢破れた。

決勝戦はいつまでも夢に見る。なぁ、どうすればよかったんだよ。もう、考えたくもない。


「鬱々としてる。純くん?」
「ん?」
「気分転換しに行こ!」

授業後に気づけば目の前にいた。笑う浦井は久々だった。

「どこ行くんだよ!」
「本屋!」

何で、俺にまだ近づいてくるんだよ。
引っ張られるがままに教室を出るとぐいぐいと人波を掻き分け玄関へと運ばれような感覚だ。
辿り着いた本屋は久しぶりで、積み上げられた最新刊の本達をみると持っている既刊の本よりも大分巻数が進んでいた。こんなに来てなかったんだな。
何でも買いますと豪語する浦井へ、買えるもんなら買ってみろとあらかた見繕って籠ごと渡すと、引きつった顔が不細工で可笑しかった。結局割り勘で会計を済ますと、お互いふらふらと帰路についた。

「友達としてなら、いいでしょ。クラスじゃなければみやびって呼ぶ人もいないし。」
「…」
「純くん、あとさ映画、今度見に行こう。」
「そんな暇じゃねぇよ。」
「受験勉強の息抜きだよ。考えといてよ。」

強引で、巻き込まれていく。
そうだった。俺はお前のそういうところが嫌いじゃなかった。でも、何も考えてなかったあの頃とは違うだろ。

お前は、いいのかよ、こんな俺といて辛くないのかよ…。なんでお前はいつも、俺を掴んで離さないんだ。


 ̄¨
クラスではたしかに浦井は話しかけてこなくなった。夏休み明けから気づいてはいたことだが、あの本屋以降友達と話すときでさえも離れているように感じる。その徹底ぶりはあまりに愚かで、健気で、いじらしい。

「哲、行ってもいいとおもうか?」

クラスに珍しく来た哲は相談したいことがあるようだった。でも、先にみやびは元気かと聞かれたことになんだか腹がたった。自分でお前は聞けるだろうがと内心思いつつ律儀に答え、この質問で哲を試した。

「行けばいいだろう誘われたなら。」
「あいつは気まずいだろきっと。」
「どうだろうな。俺達が考えてるよりもあいつは大人だからな。」
「大人ねぇ」

ここ最近、陰鬱とした気持ちから拾い上げてくれるのはたしかにあいつかもしれない。直接的じゃなくてもクラスでバカやって笑わせたり、亮介を話に寄越したりと、もし本当にあいつが仕向けてるのであればの話だ。
少女漫画でいう当て馬が好きな人にフラれてからも優しかったりするやつだ。

「だとしたら、献身的過ぎだ。」
「純が心配なんだよ。」

そう言う哲は口角が上がっていて、あいつをよく知る男と考えると忌々しい。そう考えたあと瞬時に自己嫌悪に陥って落ち着かなかった。

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