Coccinelle | ナノ


▼ 悲しみに輪をかけて

今日も白熱した試合の応援を終えて、帰ろうとした中で、純くんは私を呼び止めて次の日の夕方、私のバイト先に行かせてくれと頼まれた。またふられるのだろうかと思った。

でもまさか、こんなこと言われるなんて思わなかった。

「俺はお前と同じ名前の子を好きになったことがある。」

「…だからだめなの?」
「死んだんだよ。もう、みやびはいない。」
「え…」
「おまえといると楽しいし、馬鹿で飽きなくて、応援してくれて嬉しい。でも…」

純くんは、私の顔を見てくれなかった。握った拳が彼の苦しみを物語っていた。

「おまえといると…辛い。クラスのみんながお前の名前を呼ぶ度に元気だったあいつを思い出す。みやびがいつまでもいつまでも忘れられないんだ。だから、ごめん。」

私、もしかしているだけで純くんを苦しめてた?
彼を好きになったことがこんなにも罪深く感じる。泣いてるの?純くん、わからないよ、顔あげてよ。貴方が笑ってくれるなら何だって出来るのに、これじゃ何も…

こんなになるまで私が傷つかないように自分の気持ちを隠してたなんて気づけないよ。ここまで辛い気持ちになるならなんで純くんは私に優しくしたのよ…なんでよ。私、馬鹿だからちゃんと言ってくれないと分かんないよ。

「いっ…今まで私自分のことばっかで……ごめんなさい。」

そうして、それから一週間後、純くんは夏の戦いを終えて高校生活最後の夏の大会は幕を閉じた。純くんはいつまでもいつまでも頭を下げたまま顔をあげることはなかった。あと一つで夢の舞台に行けたはずだった彼らに、頑張ったとよく戦ったと声をかけ続けたけど、それ以上何も出来なかった。

純くんは夏休み明け、ばつが悪い顔ではいたけど、クラスの皆は私含めて野球の話題に触れることはもうしなかった。
2度もフラれた身としては彼に近づくこともままならない毎日を送っていた。涼しい図書館と受験勉強、学校では模試をして、3つくらいの志望校の判定を見ては溜め息をつく。もうすぐ、一度目の入試が近づいてきている。

純くんは…これからどうするんだろう?

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