▼ 見つけたのは、恋の色。
卒業から数年の月日が流れていた。
私は、紺野に連絡をとっていた。また、上司に怒られた、ホントにムカつく〜と、よく愚痴っている。モラトリアムが恋しいと泣いていた日もあったようだが、慣れてきたみたいでよかった。
今日は久々に四人で会える日で、学校に集合だ。紺野は来たがっていたが、この様子だと遅れてくるかもしれない。小湊くんとは季節を跨ぐごとに連絡を取ってはいたけど、結城君には久々だった。
電話が鳴って、応答すると小湊くんは学校には行かないで直接お店に行くと連絡が来た。
「えー何で!私一人で、ここで待つの嫌だよ。」
「しょうがないでしょ、俺は今日は神奈川から行くって行ったじゃん。交通渋滞なんて予測してもしきれないし。」
「前泊すればよかったじゃんか。」
「ごちゃごちゃ文句言わない。」
相変わらず、小湊くんは強いし敵わない。しょうがないとため息をつくと、ふらふら歩きながら周り、私は結城くんを待った。
私は思い出したように、思い出の場所へ行く。桜の木が今もまだ大きく立派に立っていた。小川も変わらずにある。懐かしいな、あの頃が、あの時本当に人生を諦めていたとしたらもうこんな思いもしなかったかもしれない。
あの頃に描いた男の子は今私の目の前にいたように見えた。一瞬目を閉じて、開けると結城君だった。
「あれ、結城君ってもしかして…」
「そうだよ。」
結城君は笑っていた。大人になって貫禄だって出てきた身体の癖に、あの時と変わらずに。
ねえ、私達大人になってみてる世界が変わったよ。あの時足掻いたことが、今となっては滑稽かもしれない。でも、一つ一つ乗り越えた先に見えた景色とか、大仰じゃなくても見えてきた小さな変化とか、見つけた色があったよね。
ねえ、また私、新しいものを見つけたよ。
蒸せ返るようなあの暑さが戻ってきたみたいに、また胸が熱くなった。
fin
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