▼ いつだって守るよ
『おい倉持、半端な気持ちや優しさでそらを助けようとするんだったら止めろよ。』
それはある日天野が口論しているのを聞き、倉持が助けに入ろうとした時の御幸の一言だった。
酷い言葉の投げ合いに、誰もが関わりたくないと急いでその場を去っていくのに対し倉持と御幸は足を止めていたのだ。
『お前幼なじみのくせして、つめてー奴だな。』
『最後まで続かない気持ちなら、助けない方がましなんだよ。途中で捨てちまうくらいなら関わらないで欲しいんだよ...なにより、そらに失礼だろ?』
『…そうだな。』
(そこまで天野のこと想ってるのになんで守ろうとしないんだよ、お前は。
御幸、俺はあの時のお前の言ったことをするぜ。いや、この気持ちは半端じゃない。だから…)
駆け寄る倉持は大丈夫かと天野の手をとる。痛々しい姿に僅かに眉を寄せ、握る手に力を入れた。
「....くら..もち?」
「安心しろ。もう、大丈夫だ。」
倉持は庇うように天野の前に立つ。睨み付けるが、暗がりで相手に顔は見えていない。
「お前らマジで最低だな。こんな時間まで血みどろになるまで殴り続けて、コイツが何かしたか? 確かにコイツは口は悪いし、他人との付き合いだってよくない奴だ。
だけどよぉ、ここまでいじめて何が楽しいんだよ。」
「あんたにソイツのこと、色々言われる筋合いないんだけど。」
「何? 女の子助けて王子様気取り?? マジでウザイ。」
「うるせーよ。」
倉持の尋常ではない怒りを感じたのか少女達は怯んだ。
「あ…あんたに何言われようが関係無いからっ」
「そーかよ お前らがただの最低な奴等だってことは分かった。だからいじめを止めなくても別にいーぜ。その代わり…」
一瞬倉持は天野を見た。
その何かを決意した強い眼光に、天野は息を飲む。
「いじめるのは俺にしろ。」
「...何言ってんの? ワケわかんない…そこまでしてあんたは何がしたいの?? そこにいるゴミ女をどうしてそこまで…」
「守りたいからだ。一生、俺の手で天野を」
揺るぎない想いは変わらず倉持の胸の中に生き続けている。そんな様子を見て天野は、か細い声を絞り出した。
「.......バカ」
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