▼ いつだって最後には
天野が毒舌を炸裂させクラスの女子を泣かせた日から数週間たっていた
また3人でいるようになった天野と御幸と倉持
その様子に先輩の2人は安心し 倉持と同室の沢村はその3人の中にちょくちょく遊びにくるようになった
倉持は調子を取り戻し守備では夏の大会の状態に戻っていた
だが
秋季大会ブロック予選で青道高校野球部は悲惨な勝ち上がり方をし多くの課題が残る結果となった
そんな中 御幸は片岡監督と呼ばれる男に呼び出されていた
「キャプテン? 俺がですか??」
「そうだ…元々お前が帰ってきて反省している態度が誰から見ても分かるようであれば秋大以後はお前に任せると前園と倉持との話し合いから決めていた だがこの前の試合を見れば分かるように本選ではチーム全員の力が確実に必要になってくる だから本選ではお前をレギュラーに復帰させるぞ」
淡々と話す片岡を御幸は慌てて遮った
「ちょっと待ってください! ブランクのある俺がベンチ入りしてそして本選ではレギュラー復帰は嬉しいです でも…キャプテンは…」
御幸の焦り様に片岡は気づかれないように笑う
「お前の言いたい事は分かる だがこれは結城からの推薦でもある それに前園と倉持はチームにとってお前と言う男の存在の大きさをチームにとっての必要性を話していたぞ」
「!!」
「確かにチーム全員がお前のキャプテン就任を望むとは限らない だが全員がお前の力を帰ってきてからのお前の真摯な態度を認めてはいるんだ 探り探りで構わない まだ時間はあるからな」
「…考えさせてください でも前向きには考えてみます」
「分かった」
寮の御幸の部屋であろう部屋に帰ると疲れた様子でベットの中に御幸は入った
(あー疲れた …キャプテンか 倉持もゾノも何も言わなかったクセに…)
9月26日 日曜日─‥
休日ということもあり天野は寝ていた
携帯が鳴り響き天野は腕だけを出し携帯を探し切った だがまた鳴り始める携帯に仕方ないと電話にでた 不機嫌そうに
「はい 天野」
〈俺だけど あ 寝てたのか?〉
「俺って誰」
〈伊佐敷 あのさ今日引退試合があるんだ 亮介も出るし見に来ないか?〉
「引退試合?」
〈色々事情があってこんな時期にやることになったんだけど倉持や御幸もいる現役チームと引退した三年生チームが殺り合うんだよ〉
「なんか伊佐敷先輩が言うと殺しあいに聞こえる…」
そう言って欠伸をする天野 それが分かったのか電話の向こうで笑う伊佐敷の声が天野の耳には届いた
〈これで本当に俺達が高校生としてやるのは最後だからな… ま!気が向いたら来いよ じゃあな〉ブチッ
一方的にかけてきて一方的に切った伊佐敷 それに盛大に舌打ちをする天野だが
「…最後か」
足は青道に向かっていた
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