花 | ナノ


▼ いつだって君を想う

次の日 天野は倉持を教室から連れ出した

「なんだよ 急に屋上に行こうなんて」

「いいじゃん あたし好きだし」

「知ってる」

倉持の手を引っ張ってずんずんと進む天野 その姿に倉持は仕方ないかとついて行った
屋上に着くと天野は忘れ物があるからここで待っていて欲しいと言い残しその場をあとにした 残された倉持は久しぶりの屋上の風にあたり少し肌寒さをおぼえた

「(よくこんな所にいつも来れるよな…天野の奴)」

風の当たらないところを探し逃げ込もうとするとそこには先客がいた

「げ…」「…御幸」

御幸だ
黙りこむ2人 舌打ちをし倉持は帰ろうとした

「倉持 お前何でここに?」

「何でって天野が…あ」

「そら?…あ」

((アイツ!!!))

全てを理解した倉持は帰ろうとした足を止め御幸より少し離れた場所に腰を下ろした
それを見ていた御幸はどうしたと話しかけた

「…俺達に話し合えって言いたいんだろ 天野は」

「そうだな それにしても素直だな案外」

「うるせぇ」

そう悪態をつく倉持は御幸を見ようともしない やれやれと御幸は黙り 2人の間にはまたしても沈黙

「…お前が猛省してるなら前みたいな関係に戻ってやってもいいぜ」

「いいのか」

意外そうな顔をして倉持を見るが倉持は御幸と向き合う気配はないがつまらなそうな顔をしていた

「別に俺は天野を困らせたいわけじゃねぇから でもお前を許したわけでもない」

「だよな 明らかに不満そうな顔してるし」

「顔見えてねぇだろーが!」

「はっはっはっ」

舌打ちをまたする倉持

「反省はした そらが迎えに来るまで戻る気なかったし」

「当たり前だ!」

「でも 俺の根本的な所は変わらない」

「あ?」

その言葉に倉持は御幸の方を向き睨み付ける だが御幸はそんなことには動じることはなく微笑して言った

「そらのことが好きだ」

真っ直ぐな言葉
倉持はこの御幸の言葉は絶対に嘘ではないことが理解できた
倉持がいつでも不安な気持ちが消えないでいるのはこの御幸の真っ直ぐさがあの日以前からどこかで分かっていたからだ

天野と御幸はもしかしたら…と倉持は1人思うのだ

(けど そんなことはないはずだ 純さんだって天野の言葉は信じてやれっていってたし でもこいつはやっぱり…)

「安心しろよ 奪うつもりとかねーから お前から」

「!」



「いつだって羨ましいのはこっちなんだ」

ポツリと呟いた御幸 隠してはいたが御幸は悲しそうな顔をしていると倉持は思った

「どういう意味だ」

「言わねー ご丁寧に教えてあげられるほど俺も出来た人間でもないし さっ 部活行くぞ」

そう言い立ち上がった御幸はいつもの表情 扉に向かい歩いて行った 倉持も急いで追いかける

「秋大もそろそろ始まるしお前にはもっと打ってもらわないとなー」

「!! それはてめぇだって同じこと言えるだろーが!!」



悪態をつきながらも2人で歩いて行く

それは以前と同じような光景でもあった

(羨ましいよ 分かりにくいけどたしかにそらに想われてるお前が でもそれを教えてやるつもりはない これが僅ながらの俺の反撃)

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