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▼ いつだって野球部

真剣な表情で立つ沢村
それに対してなんだお前は?とでも言いたそうな天野は少し沢村を睨み付けていた

「天野さん ちょっといいですか?」

「? …その声どこかで聞いたような」

沢村の声を思い出してみようと考えている天野だが沢村は気にせずに隣に座ろうと近づいてきた



─‥《天野さん! 倉持先輩の同室の沢村です 倉持先輩がキレて大変なんです!!》

とかかってきた電話を思い出した

天野はその時いたずらか何かと思い切ろうとしたがその声のあまりの必死さに少しだけ焦りを覚えたものだと確かに天野の記憶の中には残っていた
野球をやっている倉持が今一番大切にしていた物であろうグローブを傷つけられ 完全に今相手を殴ることしか考えていないということをその声は教えてくれたのだ

『でもそこまでされたなら暴力振りたくもなるでしょ なんかそう言う解決の仕方は胸糞悪いけど』

《ダメです 暴力事件になってもしそれがバレれば夏の大会に出られません! 先輩達の夏がこんなことで終わるんです 俺の地元でオフ中に体罰がバレてとうぶんの間 対外試合が全部なくなった所がありました》

『(確かにあの女共なら絶対にバラしそう 野球部以外の教員とかに…)』

暴力は駄目だ それは天野も同じだった
だが そこまでして野球を重要視するその声が 野球は大切なものであるから怒った倉持とその根本は同じであるのではないかと天野は感じた

(そこまでして必死になれるものを糞最低な暴力で駄目にしていいの?)

その疑問はその時の天野を動かした

『じゃあ あたしは学校を探すからあんたは外を探しなさい』

《えっ…じゃあ!》

驚く声に間髪入れずに天野は答えた

『倉持を止める』

─‥

「思い出した あんた確か倉持が暴力沙汰起こしそうになったときに電話してきた奴でしょ」

はい そうですとその時の事を思い出し笑う沢村 そして座った
伊佐敷と小湊はなにそれと顔を見合わせた

「お前等 初対面じゃないのか?」

「初対面だよ 電話で声を聞いただけだから」

っていうか暴力沙汰って何だよと尋ねてくる伊佐敷を無視して天野は沢村の話を聞こうとした だが小湊はそれを許さなかった

「天野 今の事詳しく話してくれない?」

急な空気の変わり様にそこにいる誰もが凍りつく

「…」 「…」



「嫌」

相変わらずの天野

天野と小湊の間にはただならぬ何かが流れ 慌てる伊佐敷と沢村

「…まぁ 後でもいいかな」

その沈黙を破ったのは小湊で その顔は相変わらずのニコニコとした笑顔であった

で 沢村は何を相談したいのと尋ねると急な質問に一瞬慌てた様子を見せたが自分の今言わなければならない重要な事を思い出したのか来た時の様な表情に戻った

「倉持先輩 最近全く寝てないみたいで…」

「やっぱりね」

「昨日なんて俺が自主練から帰ってきてもまだ寝てなかったみたいなんですよ!」

「…」「…?」 「おい ちょっと待て」

天野は分かっていなかったが先輩2人は分かったらしく 溜め息をついた
何がなんだか分からない天野は会話を聞く

「沢村 てめぇ昨日何時まで自主練してた」

「え? 1時くらいですかね」

「…ほどほどにしないと授業で爆睡するよ」

「そういうこと全部監督の耳に入るからな」

「あっ それゾノ先輩にも言われました」

和気あいあいとした野球部の会話の中に入れず1人ポカンとしていた天野

その顔に
((珍しい…))
と先輩2人は思っていた

「どうしたの? 天野」

「えっ俺何か変な事言いました!? 天野さん!!」

「だって… そんな時間まで練習するなんて驚いた」

そんな天野の様子を見て伊佐敷は吹き出した 何?と不機嫌な表情を浮かべると それを更に笑うわけだが…

「こいつは青道の野球部の中じゃ今一番遅くまでやってんだよ」

「俺達も現役の頃はかなりやったし 沢村だけじゃなくて皆練習終わった後は自主練してるから」

「じゃあ…倉持も?」

「もちろん」

小湊はニコッとまた笑う

「試合見に行ってあげればいいのに」

「だよな〜」

そんな会話を聞きながら天野は空を見た
何やってるのと言う小湊 そんな小湊を見ようともせず

「野球バカ」

と呟く

その言葉に3人共怪訝そうな顔


だが 天野は微笑し空を見つめていた

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