▼ いつだって心配で
朝 眠たそうに目を擦り天野は自分より更に眠たそうな倉持に声をかけた
「おはよう」
「…」
ボーッとする倉持
天野は倉持の顔の前でパンッと手を叩いた
驚く倉持に天野は少しだけ不機嫌な表情
「うぉっ なんだよ 朝っぱらから」
「おはよう」
「!…おはよう 珍しいなお前から挨拶してくるなんて」
そう言って笑う倉持
久しぶりに見たその笑顔に天野は切なくなった
そして倉持のために今の状況を何とかしなくてはならないと心に決めたのだ
─‥
「小湊先輩 あたしはどうすればいい?」
「いきなりだね…そして相変わらずのタメ口」
「ねぇ 伊佐敷先輩 どうすればいい?」
「無視…」
屋上には天野と小湊と伊佐敷がいた
天野の先程の態度に小湊の周りには黒いものが漂っていた
だが動じぬ天野
「倉持の調子が悪いっていうのは最近聞いたよ けど夏の大会前もそういうことあったんだよね」
「そうなの? 初めて知った」
「お前 本当に野球に興味ないんだな」
「分からないから」
肩を竦める天野
「(かわいい…)いっ」
見とれる伊佐敷の横で余計なこと考えるなとでも言いたそうに黒いものをまたしても小湊は漂わせる 伊佐敷に対しては効果は抜群だ
そんな2人のやりとりなど知らん顔で天野は考える
「一也が戻って活躍し始めたら反比例して悪くなり始めた…か」
そうしてやはり御幸との関係の改善が必要だと思う天野
その時扉が開いた
「あの… 倉持先輩のことで相談があるんですけど」
沢村がいつになく真剣な表情で立っていた
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