花 | ナノ


▼ いつだって感謝する

潮風が頬を撫でどこか気持ちがよさそうな顔をした天野がそこにいた

天野は海に来ていた

そこは天野の昔から好きな場所



御幸はそこにいた






「もうここしかないと思った」

後ろから声をかけ隣に並ぶ

「!!! そら!? …なんで」

無視を決め込み
「家にも帰ってないし 寮にもいない 親には口止めとか」

「おいおい 俺の話無視かよ…」

「本当に探したよ」

「…っ」

天野の鋭い目付きに気まずそうな顔で御幸は黙った

「帰ってきなよ みんな待ってる」

「倉持もか?」

「そう 何してたか知らないけど こんなとこじゃ寂しいでしょ?」

溜め息をつき御幸は言った
「ここの近くに病院がある」
「…?」

「ずっとそこでカウンセリング受けてた」

「なんで?」

「お前をあれ以上傷つけることが嫌になったから… 俺ってあの時どっかおかしかっただろ」

そう言って自嘲する御幸

「たしかにそうかも」

「........」


もう一度御幸は笑う

「いつからこんな俺になっちゃったんだろうな

どっからおかしくなった?

どこで間違えた?

カウンセリング受けたってそれの繰り返しで… でも受けてたからこそまだ踏みとどまれた」

「…」

「色々とそらのこと考えて 何がしたかったんだと考えた

それで分かったことがある

俺は歪んでるって 心が」

「だから帰ることはできないってこと?」

「あぁ」

その返事に天野は思い切り眉をしかめ溜め息をついた

「馬鹿じゃん」

「は!? 俺は…「あたしは! これでも小学校の時からずっと一也に感謝してるよ」

その言葉に御幸は目を丸くした

「なんだかんだ言ってたけどさ いじめとかあったって一也はあたしから離れてはいかなかったでしょ?

あたしはそれが嬉しかったよ ずっとね

だから歪んでるとかそんな理由でどっか行かないでよ 距離おかないでよ 寂しいんだよ…っ

本当はあたしがっ… 寂しいんだよ…」

「そら…」

いつの間にか泣き始めていた 天野

そして御幸も目に涙を浮かべていた


天野は御幸の手をとると
「帰ろ 皆待ってる

倉持や小湊先輩や伊佐敷先輩とかみんな優しい

待ってる 私も…」

そう言って笑う天野 それでも涙は止まらなかった

そんな天野の手を強く握り返し御幸は手を繋いだ

引っ張りながら歩き始める御幸に天野はただついていく

「俺 やっぱりそらのことが好きだ」

「!!」

「そらの笑顔見て思い出した

最初はその顔が見たかったんだって…

帰るよ 俺





そらがいるから」











そう言う御幸は優しい目をして笑っていた

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