▼ いつだって素直が可愛い
天野の元に向かっていた倉持だったが居場所が分からなかった
(何処行った? 携帯…アイツでるか?)
倉持は天野に電話をかけようと携帯の電話帳で天野そらを探す
そんなとき倉持が決まって思い出すのは連絡先を赤外線で交換した時だった
『交換して…くれるよな?』
携帯を差し出して天野の前に見せた
『…』
『(なんで無言なんだよ!)交換し…『二度言わなくても分かる 馬鹿にしてんの?』
『え』
『は? 早くしてよ』
倉持は初めて見せる天野の素直な態度に驚いた
(少しは素直なとこあるんだ…)
『あ 意外と早い…』
赤外線で交換したことを確認して天野は呟いた
『たまに遅いやつあったりするよな』
『ふーん』
(案外心許したヤツには素直なのか? ってことは俺にもやっと…)
『何 にやけてんの きもっ』
『…』
─‥
着信拒否になってないことを祈り そっと倉持はボタンを押した
「(思えば付き合ってからそんなに経ってねーよな 俺達… そう言えば亮さんは何で俺達を掻き乱すようなことを言ったんだ…?)」
その時着信音がきれた
〈…〉
「天野… さっきはごめん」
〈倉持 てめぇ誰に謝ってんだ〉
「…」
倉持は静かに携帯をきり通話履歴を見た
「(…天野だ おかしい 幻聴で純さんの声が聞こえた)」
そしてもう一度かけ直す
〈倉持てめぇ 何勝手にきってんだ!〉
「純さんなんで天野の携帯持ってるんですか…?」
〈あ?先輩の話し無視すんのか!?〉
「純さんだって俺の話し無視してますけど」
〈あれだ 天野が携帯忘れてったから…〉
「…」
〈…?どうかしたか?〉
黙り込む倉持を怪訝に感じ伊佐敷は尋ねた
「それはホントですか?天野がそう言ってくれって頼んだとか天野がでなかったから純さんがでたとかそういうことじゃ…」
〈倉持!!〉
伊佐敷は大声で倉持を制した
〈お前さ アイツの彼氏だろ だったら天野の言葉は信じてやれよ〉
「だって…」
〈だってもくそもねぇ!どんな状況でもどんなに疑わしい時でもアイツの言葉は信じてやれよ〉
「じゃ もし嘘だったら?」
〈そんときは怒りゃいいだろ とにかくっ!最初から疑うな〉
「…はい」
伊佐敷は待ってろと言い 倉持は黙った
〈倉持?あたしだけど…〉
「天野…!?」
〈さっきはごめん〉
その言葉は滅多に聞くことのない素直な一言だった
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