12月31日 19:20
件名

一緒に年越しをしたい。
駄目か?


─‥

このメールが届いた時涙が出そうになった
私は余韻に浸りたくてスマホをずーっと握り絞めていた

母親が紅白歌合戦が始まった〜と騒ぎ始めたのでやっとメールを返さなきゃと我に返った

高1の時から付き合っているけど野球漬けの哲也は一度だって年の瀬を一緒に過ごしたいなんて言ったことなんてなかった
そりゃ一年中野球やってるから年末年始家族とゆっくり過ごす滅多にないチャンスだから当然と思ってる…

でもね…本当は色んな行事を一緒に過ごしたかった

そんなこと言ったら哲也は困るだろうから喉まで出てきた言葉をいつも飲み込むばかりだった

それでも高3になってようやく、ようやく!


12月31日 20:01
件名 ありがとう

私も哲也と一緒にいたいよ

ありがとう(^^)

─‥

12月31日 20:06
件名

じゃあ いつもの公園で待ってる

11時に来てくれ

─‥

いつもの公園っていうのはちょっと私達の住んでいる土地から離れた高台の場所
流石哲也 初日の出まで見るつもりだな 確かにあの場所は初日の出を見るのにはピッタリだ

私は11時まではそわそわで赤と白どちらが勝とうかなんてどうでもよかったなんてのは思わなかったけど そわそわしていたのは本当。
母親にこっそり出ていくとだけ伝えて(紅白の結果をちゃんと見ておいてよ!と言うのも忘れなかったけど)ちょうど10分前についた 哲也はまだ来ていない

雪は降ってはいなかったけど超寒くて 息は白かった 鼻の頭も赤くなってるのかな?
手が凍ってるみたいに冷たくて
来ないのかな…忘れたのかなと思った
ふとスマホを見ると1時になっていた

思えば私からの告白でそばにいたいとか何とかその時は言ってたような気がする あの時は本当に必死で哲也がありがとうって言ってくれたときは泣き出していた自分がいたこともいい思い出

一緒にいたいなんて私がほざいてるだけだったからまさか哲也も思ってくれてたなんてとか…思ってしまった自分

ハズイ…ハズクナイ?

「恥ずかしいーぞぉぉぉお!!」

「何がだ?」

「うぉ!」

振り向くと哲也が後ろに

「遅いよ 今何時だと思ってる? 哲也の時計は今何時よ?」

「すまない」

怒っているふりして反省してる哲也をチラ見
本当は来てくれたこと嬉しい
哲也のためなら何時間でも待てる(これちょっと嘘)

「これ探してた」

そう言って差し出した哲也の手にのっていたのは可愛らしい私好みの色の手袋

「去年の冬も寒そうにしてたから去年買ったんだ」

「え? 去年??」

「あぁ 去年」

「???」

近くのベンチで出来るだけくっついて座る
哲也は桜手を貸せと私の手に手袋をはめてくた
そうしてくれた哲也と哲也のくれた手袋があったかくてこのわけの分からない天然野郎がとか言う言葉をまた飲み込む

3時くらいだったろうか哲也は言った

「その手袋渡すタイミングをなくしたからいつ渡そうかと思ってたんだ」

「え…そうなの? 私はいつでもよかったのに」

「仕方ないから夏の大会で甲子園にいけたら渡そうと思ってた


でも…俺達は負けたから」

そう言って俯く哲也

私はあの夏を忘れたことはない

会いに行こうにもかける言葉が思い付かなくて苦しかった
でもそれは哲也一緒

夏を思い出してるうちに私は夏休み明けに会ったとき哲也が握りしめていた紙袋があったことをおもいだした

「…」

でも…渡さなかった

その理由がやっと分かった


普通の人はここで切なくて泣いて抱き締めてあげるんだと思う

でも私は本音をすぐに飲み込む
言葉が出なければ涙だって出ない
私はそういう人間だ

そうして長い間沈黙

普段から口数の多い人でもないからこういうのには慣れてる



でも…沈黙を破るものがようやく出てきた

私は立ち上がり 少し哲也の服を掴む

「ほら哲也! …哲!! 見て!!」

「!」

「初日の出! お願い事叫ぼうよ」

「叫ぶのか?」

哲は少しだけ驚いてる
だって哲也から哲になったんだもん

そして私は眩しいくらいの綺麗な光りに向かって叫んだ



「これからはーっ 哲に素直に自分の思ったこと言えますよーうに!!」




そうしてまだベンチに座ってる哲に微笑んだ




そうすると哲も立ち上がり叫んだ


「大好きだ! 桜ー!!」


その言葉に泣きそうになって隠そうと抱きついた


哲は私を肩に担ぎ上げると走り出した


「恥ずかしいよ 重いでしょ!?」

「いや軽い 愛してるぞ 桜」


また唐突に…


「この天然野郎〜!」


私達はこの幸せなもの達に包まれていられるのなら何もかも忘れて走って叫んでいられるような気がした






「ねぇどこまで行くの?」

「お前と一緒ならどこまでも」



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -