「な!」

私は人生最大の衝撃を受けた


「どうしたの?」
心配する春乃は私の顔を覗きこむ
春乃の可愛らしい顔はいつ見ていても飽きないけれど 今はそんなことを考えている場合じゃなかった


かっこいい…

そんな言葉しか思いつかないほどのハンサムな方が今私達の目の前を通りすぎて行ったのだ

「春乃 今の人…」

「あぁ クリス先輩?」

しれっと名前を言う春乃のにまたしても衝撃を受け 春乃の肩を掴み勢いよく聞いた

「知り合いなの!?」

「知り合いというか野球部の先輩だよ3年生の」

あぁぁあ 超ラッキー
ガッツポーズをした私を不思議そうに見る春乃だけど 10秒後ようやく理解する そんなところを含め可愛いよ

放課後

気持ちを引き締め いざ!出陣!!と言うところでクラスのうるさいやつでバカでよく寝る奴が話しかけてきた 確か名前は…

「沢村?」

「…なんか盛り上がってるとこ悪ィけど そう上手くいかないと思う あの人」

「え? 何もしかしてあんた私に惚れてるの??」

自分でも的外れな事を言ってるのは分かってたけどなんかムカついたから面白半分に言ってみた なのに沢村は心底嫌そうな顔をした

何で あんたにそんな顔されなきゃいけないのよ!こっちだってイヤだわ!!
あれ? でも待って…

「なんであんたその事知ってるの?」

「廊下で見たし 叫んでたから」

「…マジか あのクリス先輩って方は聞いたかな?」

「それは知らねーけど」

やっちまった…

もし後ろで自分のことキャーキャー言ってるの聞いたら大抵の人は気分悪いよね しかもあんなハンサムな方だし
第一印象最悪だよ…私

沢村は言うだけ言って去っていった ってか何であんたがクリス先輩のこと知ってんのよ 知り合いかよ 羨ましい

そんな心の葛藤なんて露知らず春乃は頑張ろうね!桜と私を励ます

「可愛いよ」

「え?」


しまった つい心の声が漏れた

─‥

ここで待っていればそのうち来るからと言われ待っていると本当に歩いてきた 嬉しくてでも緊張してドキドキしていると1つ疑問も同時にわいた

「(思ったより早い…終わるの)」

そうしているうちにクリス先輩は私を素通りして行ってしまったので慌てて呼び止める

「あの!」

振り返ってくれたクリス先輩 でもその顔は冷めていて思っていたより目は死んでいた

あれ? こんなに怖かったっけ?

「なんだ? 話がないなら行くぞ」

「ぁあ! ありますあります すみません えっと… 一目惚れしてしまいました!!」

「…だからなんだ」

「え?」

「付き合って欲しいとでも?俺はお前を初めて見るしなにも知らない 付き合うに値しない それに誰かと恋愛する余裕も俺にはないからな」

淡々とボソボソと話す先輩
でも初めから付き合ってほしいなんて言うつもりはない だってこれからアタックしていくつもりなのだから

「大丈夫ですよ!お友達からで!!」

「…」

「私は麻日奈桜って言います 今日は名前を覚えて欲しいと思って来ただけですから! これからよろしくお願いいたします」

一礼をしてその場を去る
これって言い逃げ?

でも 頑張る

クリス先輩をもっと知りたいから


「あー! またしても先に帰りやがったぁ!!」

…バカの声がする
クリス先輩を見るつもりで振り返るとバカの沢村のせいで見えない

何故 お前がここにいる?

「沢村」

「何故 お前がここにいる?」

「こっちの台詞なんだけど って言うか何で野球部の格好してるの?」

近づくとはぁ?って顔をしていてムカついた

「俺は野球部だ クラスでも言った!」

「あー 私あの授業寝てたから」

その後愚痴を聞いたけどクリス先輩とバッテリーなんて沢村にはもったいないんじゃない?

クリス先輩はキャッチャーって事を知れただけでも幸せだけど

それより

「バッテリーって何なの 沢村」

「お前なめてんのか…」

─‥

あれから私はクリス先輩に付きまとうようになった 自分で言うのもあれだけど…

なかなか名前を呼んで貰えないし 挨拶くらいしか出来るようにならない 言葉を交わそうとしても緊張して上手く喋れない しどろもどろしているうちに帰ってしまう

そんな日々


「はぁ クリス先輩と会話が出来ない…」

机に突っ伏し足をバタバタして泣き言を言う私に春乃は笑う
あのね いくら可愛くてもね 怒っちゃうよ? 私


「でも待ってくれてるんでしょ?」

「何を 誰が どこで」

「桜が話を始めようとするまで」

まぁ…たしかにしどろもどろしちゃうからその内に帰ってはしまうけど私が
『すみません あまりの緊張で話せません!』って言うまではいてくれるんだよね

うん… そうか そう言えばそうか

「もしかして脈あり?」

「… うん!」

その一瞬の間は何かな?

「あんまり調子にのってると後が悲惨だぞ〜」

出た 沢村!

「あんたもね あんまりクリス先輩に反発してると後悔するから!」

フフフ 今に見てろ沢村 私には今日の放課後とっておきの秘策があるんだからね ざまぁ!

クリス先輩 貴方と言うお方に出会ってから私は…私は


「買い物?」

「はい! そしてその帰りよかったら…本屋さんで立ち読みとかどうでしょうか? もし欲しい本があれば私が買いますし!」

「何故そうなる…」

「あ…すみません」

買い物とかダメかな まぁ急だし でも本屋さんは行きたい個人的に 新巻出るんだよねー

「まぁ…本屋になら付き合ってもいいが」

あーやっぱりそうだよねそうかそ… え?

「今なんと?」

「放課後はそこの…3年の階の階段前で待っててくれ」

「本当に本当にいいんですか!? いつもクリス先輩はよそよそしいから嫌われているものかと思ってました よかったです嬉しいです あ では そろそろ次の授業家庭科で移動しなければならないので 失礼します」

急いで礼をするクリス先輩の目を見ることもできずに嬉しさのあまりスキップで帰っていってしまった

優しい優し過ぎる 大好きでーす!!

その放課後家庭科で作ったお菓子を持ち待っていた 3年生ばかりで少し緊張するけどあの方のためなら例え火の中水の中上級生の中だ 春乃!沢村!ほら見ろクリス先輩はとてつもなく素晴らしいお方なんだからね!私の毎日の熱烈アタックが実ったんだ
張り切りまくっていると野球部のグランドで見かけたことのある1年がいた その人達は私を見るなり鼻で笑う なんだこの失礼極まりない連中は

「お前まだあのクリス先輩に付きまとってんのかよ」

「煩い いつまでも付きまとうだけの私と思うなよ」

フフンと今度は私が鼻で笑うと何だと聞いてきた

「クリス先輩と放課後デートよ」

「…お前遂に妄想癖まで出てきたのか 可哀想に」

「事実よ」

「妄想癖がか?」「やべぇコイツ」

「違うバカ デートよデート」

こんなマジの話をどうして信じないのかもう本当に信じられない これだからガキは駄目
そんなガキ共達は百歩譲って本当だとしてもよぉと言い始めた

「あの人のどこがいいんだ?」

「 目付きは悪いし暗いし喋り方なんてぼそぼそしてて聞き取れないし」

「 まともじゃねぇよあの人 レギュラーとられてからおかしくなって投手何人も潰してきたって…」

パァン

その時もう言葉より手が出ていて気がついたら1人をおもいっきり平手打ちしていた
一緒にいた2人もそして平手打ちされた本人も驚いていた

「何も知らない連中の癖に何で決めつけるの?何でそんな酷いことが言えるの? 何を分かっているって言うの?」

「沢村だって愚痴ってんじゃねーか」

「沢村はまだバッテリーをクリス先輩と組んでいてまだ日は浅いけどあんた等より近いし知ってる」

黙りこむ3人と私
少し経って1人が溜め息をつく

「分かったよ」「…悪かった」

「お前本当にクリス先輩のことが好きなんだな」

反省の色をちゃんと確認すると私は大きく頷いた

だってそんなこと…

「決まってるじゃない クリス先輩が私は好きだよ 最初はただの一目惚れ でも今は あの人のことをもっと知りたい もっともっと好きになりたい」

「それを俺達に熱く語ってどうする」
「恋は盲目ってやつか?」

「本人の前でなんて言えません」

連中が去っていくとかなり暫くしてからクリス先輩はやって来た

「遅かったですね もう随分待ちましたよ〜」

「悪かったな 待たせて」

「いえいえいえ 何時間でも待てます!」

「…そうか」

心なしか素っ気ない先輩 そして私より一歩前を歩くクリス先輩

何でだろう 顔が赤い?

「クリス先輩?」

「なんだ」

「…いえ」



1つの疑問を残しつつ本屋に行った私達 ゆったりとした幸せな時間を過ごした

様子のおかしかったクリス先輩にあの時どうしたのかと後で聞くと私の差し上げたお菓子がアメーバみたいな形状でどんな反応をしようか考えていたそうだ 流石クリス先輩考えることが素晴らしい 少しバカにされた気がしなくもないけどね

「クリス先輩!」

そして私は今日もクリス先輩の元を訪れる 前よりかは喋れるようになったつもり

まだまだこの恋が実るのは先でしょう

ん? 本当に実るのか??って みっ…実る!(はず)


─‥

「あの人のどこがいいんだ?」

麻日奈の元へ向かうと待っている彼奴は話しているようでそんな声が聞こえてきた
本屋に行くのは親父に数日前から本を買ってきて欲しいと頼まれていたからだ バカみたいに毎日来る麻日奈は理由を話そうとすると急いで帰ってしまうし あまりに喜んでいたからいいかと言う気持ちもあり後回しにした

「 目付きは悪いし暗いし喋り方なんてぼそぼそしてて聞き取れないし」

陰口を叩く奴等はおそらく野球部で 練習にもまともに参加せず早く帰ってしまう俺などそう言われて当然だ リハビリをしているなんて事実今の1年が知るわけがない

「 まともじゃねぇよあの人 レギュラーとられてからおかしくなって投手何人も潰してきたって…」

パァン

卑屈になる俺の考え 悪化する陰口 平手打ちした麻日奈

唖然としていると

「何も知らない連中の癖に何で決めつけるの?何でそんな酷いことが言えるの? 何を分かっているって言うの?」

「沢村だって愚痴ってんじゃねーか」

「沢村はまだバッテリーをクリス先輩と組んでいてまだ日は浅いけどあんた等より近いし知ってる」

沢村と知り合いなことに少し驚いていた事もあったが…

正直麻日奈は俺に変な幻想を抱いているものだと思っていた だからきっと幻滅すると思っていたんだ勝手に でもそういう人間じゃないんだ… 彼奴は…

少し経って1人が溜め息をつく

「分かったよ」「…悪かった」

「お前本当にクリス先輩のことが好きなんだな」

反省した様子を見せた3人に麻日奈は大きく頷いた

「決まってるじゃない クリス先輩が私は好きだよ 最初はただの一目惚れ でも今は あの人のことをもっと知りたい もっともっと好きになりたい」

「…」

少し離れた場所で壁に背を預ける
顔を触ると頬が熱くなっているのが分かった

真っ直ぐ過ぎて本人より俺の方が恥ずかしくなる

それから暫くその場にいた この熱さが引いていくまで



この時感じたこの想いがなんだったのか

それを頻繁に麻日奈を見る度に何か考えるようになって

まとわり付いてくる麻日奈を微笑して見守るようになるのはもっと先の話だ







数日経ったある日からもう一人付きまとうようになる

「「クリス先輩!!」」

「何であんたまでいるのよ沢村」

「こっちの台詞だ」

「お前ら…うざい」

「「ガーン」」



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