『女なんてどうでもいいんだよ 俺にとっては』


授業中 教師が私を睨んでるのを知りながら寝ていたら妙な夢を見た

そういえば昔そんなことを言われて御幸と別れたっけ

最悪

お前が睨んでるせいで妙な夢見たんだよ バーカって睨み返すと「ろくでもない奴め」と小声で言い 授業を再開した

最悪な気分の時には窓の外でも眺めてようかなと思ったけど廊下側の席の私はそうもいかなくて 余計に気分を悪くさせた

放課後
友人に何やってんのと呆れられる

「だって妙な夢見たから」

「そんな夢のことを言ってるわけじゃないわよ いつも授業なんて適当に流してるあんたが寝るだなんて そのあげく睨み返して目をつけられるような馬鹿なまね…」

「皆それくらいやってるよ」

「寝ることまではね」

「…」

「そういえば妙な夢って言ってたけどどんな夢を見たの?」

相変わらず細かいとこまで気の回る友人だ
散々馬鹿にしても私をおかしくした夢のことをちゃんと聞いてくるなんて


「御幸」


「え…マジ?」

「マジですヨ あ 私買いたいものあるから今日もこっちね じゃ!」

「じゃあねー (明日聞き出せばいいか…)」

友人といつものように別れる
そのあとの行き先は御幸と別れてからはずっと同じ
青道に戻るのだ

私は何を血迷ったか御幸と別れてからは御幸の放課後を見守る事が日課になってしまった
私が話しかける時と言えば決まって御幸が女の子を振るときだ もしくは喧嘩中

もちろんこの事を友人は知らない

練習前なのか練習中なのか練習後なのかよく分からないけれど御幸は校舎の人気のないところにいた 女の子と一緒に

「なんで なんで? なんで別れたいなんて言うの? 黙ってないで答えてよ御幸!」

泣きそうな声が聞こえて喧嘩かと思ってそっと覗くと女の子は声のわりには泣きそうな顔なんてしていなかった
一方御幸はというとあからさまに嫌な顔をするわけでもなくただ冷たく女の子を見下ろしている 絶対零度という言葉がぴったりだ 何も感情が読み取れないところが逆に怖いというか...

「チッ 俺にとっては女なんてどうだっていいんだよ」

「は? ちょっと待ってよ なに言って...」

「お前が言えって言ったんだろ 誰と寝たってたいして差はねーし」

あ...最低だ
そう思ったと同時に女の子は顔を赤くして走り出していた 私の隣を通ったときすごい形相で睨み付けられた「チッ マジムカつく」という言葉もおまけに聞こえてきた
女って怖い

「最低だね」

そう言って御幸の所に行く私
私も私で最低だとは思ったけど言葉には出さない

「また見てたのかよ」

「相変わらず女の子振るときの台詞一緒だしどうでもいいってとこ 取っ替え引っ替えも大概にしないと刺されるよ」

「うるせー もう見に来るな」

「...」

「暗くなる前にさっさと帰れよ」

これも同じ台詞 前にも言われたそうして私もまた来ているのだけれど
御幸もいなくなったから私は帰ることにした
また同じ道を

───‥

「で どんな夢見たの?」

友人は朝からこの話題だ 相当気になっていたのか朝の挨拶すらなかった

「御幸に振られたときの夢」

「あー アレね 振り方今でも同じなのかしら それしかないのかっつーのよ 私の時も桜の時も 同じみたいだし」

「今だって同じだよ」

「へーそうな....ってなんでしってんの?」

しまった つい口が滑った

「まさかあんた放課後 私と別れた後買い物じゃなくて青道に戻ってるわけじゃないでしょうね?」

「そんなわけないでしょ.....」

「何故こっちを見ない」

その後友人に問い詰められはしたが私は頑なに口を閉ざした
友人も御幸と付き合った過去がある 私にもう一度あんな悲しみを味わって欲しくないだからこそ友人は御幸に少々過敏なのだ
本当に優しいひと....だから



放課後いつものように友人と一緒に帰る
今日くらいは本当に買い物に行こうかと思ったけれど日課を崩すのはあまり好きじゃないからやっぱり青道に戻ることにした

今日は真面目に練習をしているようで 私はそれを眺めようと適当なところに座った
それと同時に隣に座った人がいるので横を見ると友人だった

「え」

「えって何」

「なんで...」

「桜がいるから ...いつもここであんたは何を思って何を見ているのかなって思ったから」

「...ありがと 私がいつもここに来てる理由聞く?」

「教えてくれる気あるなら聞く」

「....ほっとけないってなんとなく思ったの」

御幸のことを

ひとを傷つけるひとは無神経なひとが多いけど御幸自身も傷ついているように見えたから
私を振るときだけに見せたあの顔がどうしても愛しく見えてしまったから

「そう」

「呆れた?」

「呆れた」

「帰らないの?」

「帰る理由がない」

「...! ...ふふっ そう」

友人は溜め息をつき微笑した

「あっ!」

御幸がいない
きっといつものところだ
そう思うと私は急いで昨日と同じあそこへ向かう もちろん友人も

着いたときには口論は終わっていた様で昨日の子は泣いていた 泣かなそうだと思ったのに
...一体どんなことを言ったのか気になるかも そんな考え事をしていたら女の子は私をまた睨み付けていた
そしてこちらに来ると私の胸ぐら掴み

「っざけんじゃねーよ 何昨日に引続き覗いてんの!? そんなに人が振られるの見て楽しい?」

ヒステリックな声に耳がキーンと鳴った
別に楽しいわけではないが...
それを聞いて黙ってなかったのは友人だ

「八つ当たりするなんてみっともないわよ」

「はぁ? ...!?」

その時女の子の手を私の胸ぐらから外したのは私じゃなくて友人でもなくて もちろん女の子からでもなくて

御幸

「なんでまた来てんだよ 帰れ」

「ちょっと御幸!桜は...」



「言っただろ? 俺にとっては 女なんてどうでもいいって お前だって同じなんだよ どうでもいい存在なんだ」



もう聞いたはずだったその言葉は


でも やっぱりあのときと同じで悲しかった






───‥

「お前もそうだよ クソ女 さっさと消えろ」

「最っ低!!!」

バチンと平手打ちのいい音がした
清々しい音 桜を泣かした男には当然の報いと思い笑っていると

「なんだよ まだいたのかお前」

「相変わらずね 振るときの“クソ女”ってところ」

「さっさと行けよ お前の友達泣いてただろ」

「言われなくても行くに決まってるでしょ それにしても飽きない? いっつも同じ言葉並べて女を捨てて」

「別にいつも同じじゃねーよ」

その言葉に私は目を見開く
御幸は相変わらずの表情

「桜だけは違う 桜はどうでもよくなんかない
別に泣かすつもりじゃなかったんだ


きっとどこかで泣いてる 行ってやってくれ」



「え?」


御幸の言葉

それは桜が好きって意味じゃないの?

振り返ることもなく去っていく背中に私は疑問がわいた

友人としてこれは伝えるべきか否か....



To be continued


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -