「え? やだへんたーい」

妙に甘ったるい声

「いつもそんなこと思ってるの? やーだー」

うぜぇ

隣の女子のぶりっ子ぶりに嫌悪感で虫酸が走った

話してる男子もこんな奴の何がいいのか理解ができない 俺には近寄ることさえ出来ないのに

「えー! 桜みたいな子がいいの? ほんとへんたーい」

もう耐えられないと席を立とうとしたら

「顔に出すぎだ 少しは隠せよ」

と倉持に後ろから蹴られた

嫌悪感がつい顔に出てしまった
でも 仕方がない
あいつを嫌う女子のほとんどは皆陰口叩いて 不細工にも顔に出しまくってる

だからたまにはいいだろ?
俺だって…

教室を出て 保健室に行こうと足を進めた
つまりサボりだ
バレたらヤバイけど 練習には絶対に出るから許してほしい
練習にでない方が沢村達がうるせぇし

嫌悪感で歪んだ顔をしまいこみ俺は保健室に入った

「先生 少し体調がすぐれないんで休んでもいいですか?」

笑顔でそれでも無理してるように言うと あっさりと

「じゃあ 寝てなさい」

ベットを貸してくれた

ナイス俺 ナイス猫かぶり
いつだって他人にいい顔している 皆 騙される
いつだって俺は本心なんて見せない 皆 気づかない

野球してるときくらいだ 本当の俺でいるときなんて…

学校なんか嫌いだ

教室に響く教師の声も 俺にいい顔しようとする女も くだらない恋愛しようとしている馬鹿な男も

皆 嫌いだ

だから誰に対しても深く関わることのないようにいい顔しようと猫かぶりして
近づいているように見せて深く踏み込むことのないように遠ざける線をひく それだけだ学校なんて

それだけでも毎日疲れるのに うざい麻日奈の声を聞き今日は本当に吐き気がした

もう教室に帰りたくない 嫌だ 爆発してしまえ 死ね 滅べ 糞…


ガラッ
「失礼しますぅ」

何処かで聞いたことのある声

あ 麻日奈だ

逃げよう

そう思った瞬間 一気に閉められていたカーテンが開けられた

「ちょっと! 何やってるの貴女!!」

信じられないと言った顔の先生
意外と冷静に寝たままの俺

さっきまで甘ったるい声でぶりぶり話してたはずの奴の目は

信じられないくらい冷たく怖かった

「何? どうしたのお前」

「おサボりなんてよくないよ 御幸くん」

これまた語尾にハートマークが付きそうなほどの声
冷たい目はいつの間にか消えていた

「御幸君 貴方サボりだったの!? そういうことに保健室を使うだなんて考えられないわ! 出ていきなさい」

俺達2人は保健室を追い出されてしまった

教室に戻るのか麻日奈は歩き出した
行く宛もなかったからついていくことにした
後ろ姿をみただけでも吐いてしまいそうで俺はある意味怖かった

「ねぇ 御幸くん」

「何?」

「さっきさぁ なんで あんな顔して桜を見てたの?」

「あんな顔って?」

内心ギクリとした麻日奈の冷たい目を怖がった俺がこいつにはバレているのかと思ったから

「教室にいた時だよぉ 顔眉間にシワよってたよ〜 気づかなかったぁ?」

良かった
こんな奴に弱味を握られるみたいなことされたくないからな

でも麻日奈の次の言葉に俺は何も言えなくなってしまった


「びっくりしたよぉ

猫かぶりじゃない顔してたから」


「…!!!」

いつの間にか麻日奈の目は冷たく
いつの間にか口調も変わっていた

「ははっ 何その顔? あたしが気づかないとでも? 倉持がせっかく注意してくれてたのに残念だったね」

「おま…え…」

「ん? あぁコレ 私もねあんたと同類なの 猫かぶり 私の場合はくだらない男弄んで くだらない雌豚どもの醜い顔が見たかったから 意外とコレ楽しいの」

豹変ぶりも驚いた
でもそれ以上に俺の猫かぶりが分かっていたことが信じられなかった

「ねぇ 世の中くだらないと思わない? 友達つくって家族に守られて 笑って泣いて怒って それで何?? なんか楽しいのって感じ 皆爆発して死ねばいい

笑ってるやつみてるとさぁ 世の中こんなに幸せなことばかりなんだって満足してるやつみてるとさぁ


コロシタクナルノ」

「…」

イライラしているようなそれでも楽しんでいるような 顔

可愛らしくぶりっ子という猫を被っていたこいつは 歪んでいた

教室に戻ると
「もぉ 御幸くんがさぁ」

さっきの出来事が嘘みたいに麻日奈はぶりぶり話しを始めた
もちろん男子に 女子はまたイラつき始めた

倉持は少し焦ったように俺のところに来て
「大丈夫かよ な…なんかアイツヤバくないか?」

あぁ 倉持も見たのか 本物のアイツを

「もう 2人きりとかなるなよ 絶対にアイツどうかしてるから」

いや ダメだ
それは出来そうにない

だって

俺は麻日奈桜に


魅せられてしまったから







花言葉はいつわり

初めて本当の俺に気づいてくれた女…



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