▼ やっと会えた
苦しくて苦しくて、手を伸ばしたけど届かなかった。
元々仲間はずれだったんだ。
上にたつ存在ってそんなに十二支達にとっては大事ではないのかもしれない。
だってなんで僕を見てくれないの。
僕を選んでくれないの。
がんじがらめで陰湿でそんなのアイツに何回も言われてきた。お飾りの人形と一緒だよ、こんなの。
それを認めるのも悔しくて、悲しくて。それでも信じていたんだ。子供みたいに。
全てが崩れ落ちていく。大事に結んでいた絆すら綻んで、もう駄目だと気づいたとき、君は横にならんでくれたよね。
初めてだった。微笑んでくれたのは。
僕がずっと憎悪の気持ちと利用価値のある物としか見てなかったのが悪いのだけれど、いつも戸惑いであったり十二支達を守るための強い目を向けられていたから。
なにかを許されたような安堵した気持ちで、今度こそ待ってくれている手を繋ごうとした時、君は目の前から居なくなってしまったんだ。
死んでしまったらもうあの柔らかい微笑みがもう見られない。死んでしまうということはそういうことだ。
『あなたのお名前は?』
透、透。やっと出会えたのに…
嫌だ。
そう思った瞬間足は動いていた。
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